お笑い芸人 サバンナ

八木真澄

とーりまかし研究冊子の記事はこちらから

求められる場で明るく輝く 新時代の「営業」芸人

「3000人を呼ぶ芸でなくても それが必要という場がある。 商店街の舞台こそ自分にとっての 最高のステージなんです」

略歴

1974年京都府生まれ。1994年お笑いコンビ「サバンナ」を結成。「ブラジルの人聞こえますか~!」など多数のギャグのほか、柔道や極真カラテを嗜むことでも知られる。FP1級資格を持ち、講演や著書、動画配信でお金に関する知識も発信中

TVも地方のイベントも経験してきたお笑い芸人が、「営業」に見出す尊さとは? 「自分たちの地域にニーズはあるのか」そんなふうに迷ったときに耳を傾けたい言葉。

営業の場で考えるのは「何を求められているのか」

主戦場は、クライアントに呼ばれて芸を披露する「営業」の領域。TV出演は少なくても、その世界で八木氏は今、引く手あまたの人気者となっている。
「天然の愛されキャラ」にも見えるが、それだけでここまで来たわけではない。成功を支えるのは、プロジェクトの「構図」を読む目だ。
「呼んでくださった方にはそれぞれ意図があります。ショッピングモールであれば『お客さんを集めて買い物をしてもらいたい』、プロバイダー企業なら『新規契約に繋げたい』。自分がなぜ呼ばれてるのか、どこからお金が出ていて何をしてほしいのか、そういったことをシビアに考えて行動するようになって、お仕事をたくさんいただけるようになりました」
実は昔から、社会の裏側にある構図を考えるのが好きだった。組織は骨格、お金は血液。お金の流れで見ると、歴史も企業の関係もよく見える。若い頃、テレビでたくさんのプロに囲まれていた頃は見えなかったが、一人で営業に回る機会が増えたとき、自分の仕事にも同じ構図があることに気づいた。そのことで「結果の出せる営業芸人」になった。
「芸人って、上がるときはラッキーで行ける。でも落ちるときの、その受け皿のところにホンマに実力がいるんです。地域で言ったら、タピオカ屋もいいけど、流行が終わったとき、コーヒーの美味い昔ながらの喫茶店が強みになるみたいなもんですね」
実力を築くために地道な努力もしてきた。たとえば苦手のトークを磨くため、言葉をコントロールする力をつけようと毎朝文章を書き続けた。10年経った頃、初めてトークで笑いが取れた。そうやって培ってきた力と、もともと備わった「構図を読む目」が、確かな実力として今の八木氏を支えている。

「特別でない」ものでもそれを必要とする人がいる

 「観衆を喜ばせるために必要なものは何か?」―「笑いとは何か?」という問いと等しく答えづらいそんな問いに、八木氏は少し考えて「喜ばせるにもいろいろありますよね」と語り始めた。
「料理なら、食材も空間も贅沢で会計は5万円という高級料亭にも人は喜ぶし、とにかく安くて食べられるお弁当にも喜びます。僕の営業ってその中間というか、店でたとえるなら、『別に特別食べたいわけじゃないけど、近いしまあ行こか』っていう店なんです。でも、これも必要なんですよ」
たとえば地方のモールに人気アイドルが来て3000人の観衆が詰めかければ、きっと警備が追い付かない。求められているのは、300人が手堅く集まって、トラブルも起こらず安全に終了し、成果が上がること。「そこに向くのが自分」と冷静に捉える目は、まるでマーケターの目だ。
「お笑いをちょっと引いて見ているのかもしれないですね。芸人は普通そういう目でお笑いを見られないし、職人さんもそうですよね。僕はたぶん職人じゃなくて『店長』なんです(笑)」

最高のステージよりも「いつもと同じに」楽しく

「見に来てくれたお客さんに向けて最高のパフォーマンスを」とは考えすぎないことにしている。「基本的には均一でおらんとダメ。『めっちゃいい時』も要らない。いい時を作れば必ず下がる波が来る」……そうならないために、決して手を抜くという意味ではないが、敢えて力を抑えることも意識する。でなければ、最高の芸を披露した翌日の観衆に、レベルの低いものを見せることにもなりかねない。「長く続ける」とはそういうことだ、というのが八木氏の信念だ。
TVで人気者になりたい、よく見られたいといった気持ちはもう全くない。ただその時々に、目の前の人と楽しい時間を過ごせれば幸せだと感じている。
「今は商店街の舞台が最高のステージやと本気で思ってます。録画をしておけばその先の何かにつながるかもしれませんが、それすらしない、流れていくだけの儚さにしびれるんです。でも、別に芸人だけじゃなく、労働は全部そうじゃないですか?出世しようと思って中華料理作ってる人って少ないと思うんです。目の前のお腹の空いたお客さんを満足させたくて鍋を振っている、その姿こそ美しい。自分もそうありたいです」

社会人なら誰でも思い当たる「マニュアル」の中に芸人の世界が垣間見えるのも楽しい

独自の「営業マニュアル」を
まとめた書籍が登場

独自の営業哲学を武器に、吉本興業の「営業」の裏側に迫る人気番組『営業-1グランプリ』でも中心的な役割を担ってきた八木氏。その考えを「マニュアル」としてまとめたのが『ウケる現場のつくり方 どんなアウェイもホームに変えるサバンナ八木流「コミュ力」の教科書』(KADOKAWA刊)だ。仕事で出会う人との人間関係や自身のストレスマネジメントにまで触れた内容は、業種を問わず、すべての働く人に通じる学びをもたらしてくれる。全国各地を飛び回る八木氏ならではの「あとがき」は、地域にとっては温かなエールでもある。

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新庄 耕
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