【おもてなし人材育成】研修留学に密着!観光人材留学、留学レポート

昨今「高付加価値化」が業界でも注目のキーワードになり、多くの地域や宿泊施設でツアーやプラン造成、設備投資をはじめとする様々な取り組みが行われています。
この研究ではその中でも、”人”が関わることでの高付加価値化にフォーカス。観光地で働く「おもてなし人材の育成」として、従業員を他の地域の宿泊施設に留学研修に行かせることで、従業員の接客スキルや働くマインドにどんな変化があるのかを検証しています。

観光人材留学という”働きながら学ぶ機会”で得られるものとは。

地方部の旅館やホテルで働くスタッフは、地元出身者が多くを占めます。
地元で生まれ育ち、進学などで他地域へ出るも就職のタイミングでUターンするケースが多く、
「接客が好き」という自分の特性を活かして、地元で安定して働きたいと考えています。
日々一緒に働く仲間と、試行錯誤しながら業務にあたっている彼らですが、
多様なお客様への接客や業務効率化のために「おもてなしのレベルアップ」や「作業の型化」が求められることが増えてきました。
観光人材留学は、他の地域の宿泊施設で働くことで、自身の接客スキルUPや研修先の宿泊施設の業務のノウハウに触れ、自宿の業務改善のヒントを得ることができる研修です。
今回は実際の留学生が現場でどんな仕事をして、その時何を感じたかにフォーカスをし、今までわかっている点以外にどんな学びがあるかを、福井県のあわら温泉 清風荘から鹿児島県のsamana hotel Yakushima(以下、サマナホテル)に留学した2名のヒアリングから読み解いていきます。


『他の宿泊施設の料理・サービスがどんなものか知りたかった』調理部 西澤さん 

ビュッフェがウリの自宿清風荘では、ライブカウンターを任されていて、お料理をとりに来るお客様とお会話をしたりしながら仕事をしています。ライブカウンターの仕事はお客様の反応を感じながら働けることが特徴で、気づいたことを生かしながら、新メニュー開発やメニューの改良を行っています。自宿以外で働いたことがないため、他の宿の調理部やレストランの提供メニューが気になって研修留学の参加を決意しました。
留学先のサマナホテルでは、料理にこだわりがある職人肌の料理長の元で、今まで使用したことがない食材について理解を深めたり、お刺身の引き方や鳥の捌き方などを学びました。
サマナホテルはめずらしい食材や、おしゃれな調理方法を取り入れていたり、料理人の基礎スキルUPとしてとても勉強になりました。清風荘ではチャレンジメニューというメニュー開発の機会があるので、新しい食材の知識や学んだ調理方法はそこで生かしていきたいです。
あと気づきとして、清風荘のレストランはすごいんだなということに気がつきました。広さもメニューの数も多い。朝食は特に他所に負けないんじゃないかと感じました。
他の宿泊施設のレストランと比べて何がすごいかを考えながら、もっとお客様が楽しめるメニュー開発を行っていきたいです。


『福井からでたことがなかった。何か変わるかもしれないとワクワクした』サービス 室さん 

自宿の清風荘ではフロント対応や清掃業務、お食事の時間は食事会場でのご案内など1日のシフトの中で様々な仕事をしています。最も好きなのはフロント。チェックアウトの対応が好きで、朝からお客様の笑顔をもらって元気になれます。
実家に住んでいるし、福井から出たことがなくて、単純に2ヶ月知らない土地で住んで働くことで何か変わるのかもしれないと感じて留学研修に手を挙げました。
サマナホテルでも様々な業務を任せていただいて、最初の1ヶ月はレストランと客室案内、2ヶ月目からはフロントのお仕事をしました。レストランの仕事ではドリンクのオーダーを聞いたり、お料理をテーブルまで運んだりと、清風荘より業務の種類が多く、またメニューも独特のものがあって慣れるのに時間がかかりました。
フロントの仕事も少しずつ違います。清風荘では部屋案内がないので、部屋案内するのは初めて。お部屋に案内する前にテラスで景色の案内をしたり、そこで観光地の話をするのがとても楽しいです。
屋久島の自然が素晴らしく、初めて屋久島に来た自分もすっかり魅了されてしまって、お客様とのお話でも盛り上がります。休日に自分が観光し体験したことと、お客様の観光体験談を組み合わせて、よりたくさんの話ができるようになったり、トーク力はとても上がったと感じています。
福井にいる時は、お客様から観光地の話をしていただいても、あまりに自分にとって当たり前のもので”いいもの”と認識できていなくて、そんなに盛り上がることはなかったなあと。帰ったらもう一度福井の観光地を巡って。自分なりの案内を考えていきたいです。


違いに触れ気づく、当たり前だったことの中の”特別”

2ヶ月の留学研修の中で2人はそれぞれ、他宿で働いたからこそ得られた知識や業務スキルの獲得、おもてなしコンセプトの違いによる接客業務で意識するポイントの違いなど、業務にダイレクトに紐づく観点での学びが多くあったようです。
それと同時に「今まで気づいていなかった自宿・自地域の良さに気づいた」という言葉が2人からありました。
宿泊施設で働く従業員は地元出身の20代の若手が多く、また業種の特性上、給料や連休が多くないことから「他地域で自宿と同じぐらいのサービスレベルの宿に行くのが難しい」という問題があります。
観光人材留学では「他地域・他宿に行くこと」で、他の観光地・宿の特徴を知ることはもちろん、観光客のお客様が”旅の中で何に期待し、何に触れ評価しているか”を知ることで「お客様と共感できる接客」とは何かの気づきを得られるということがわかりました。
自分の中の”当たり前”を、お客様の興味に合わせて話せることは、”人”が関わることでの高付加価値化にとって大切なスキルの1つです。1地域1宿だけの勤務経験では、頭では分かっていても心からは理解し難い”自分にとって当たり前のことの価値”を、実体験をもって心で気づける貴重な機会としても観光人材留学は機能しているようです。


研究員のコメント

今後も発展していくと期待される観光産業ですが、AIやシステム導入などの一方で、「人が提供する価値」が旅行体験の差別化に重要になると私は考えています。
観光人材留学に賛同いただいている宿泊施設では「他宿でいつもと違うお客様へおもてなしのノウハウを学んできてほしい」「業務で素晴らしい点があったら持ち帰ってほしい」という内容の留学研修に対する期待が大きいです。
そういった学びの価値があることはもちろんですが、毎回留学を視察して個人的に一番の成長観点だなと感じる点が、まさに今回ヒアリングの振り返りでもご紹介した「気持ち」の変化です。
1つの地域、1つの宿泊施設で働くことで、地域の知識に詳しくなり自宿ならではの接客のプロになることも大切ですが、長いキャリアの中で一度よそをみてみるという経験は、気づかなかった地域の魅力、自宿の特性に気づける貴重な機会でもあります。留学することで改めて「自分の仕事ってとても素敵なのではないか!?」とワクワクし、日々の業務や成長へのモチベーションにつながると考えています。
現在観光人材留学は20代の若いスタッフが研修利用することが多いですが、10年以上働いている熟練スタッフがあえていってみることで、発見できる観点もあるのではないかと考えており、今後も様々な人×地域×宿泊施設での留学を実施していけたらと思います。


研究員 日野 秀美

宿泊業で働くことの魅力向上をめざし、観光地の人材獲得・定着・育成・評価をテーマにした研究を行う。 2013年リクルート入社。人材採用関連のサービス企画に7年携わり、新卒採用・中途採用・アルバイト採用における商品企画に従事。その後、業務支援サービスの企画へ異動。店舗運営業務を効率化するサービスの企画・開発・マーケティング・カスタマーサクセスに4年従事。2023年より旅行Div地域創造部で、奈良県の観光誘客を支援するエリアプロデュースを行い、2024年からじゃらんリサーチセンター研究員。日本の観光人材のスキルアップを目指した越境学習プロジェクト(観光人材留学)の企画・運営を実証実験として実施。また観光地で働く従業員のスキルアップのための学びの場(天童温泉Next)の設計・運用を行う。現在は「働いて良しの観光産業 」の実現に向けた実証実験や調査を企画。

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