アフリカと共に社会を創る 現場派ソーシャルイノベーター
目指すのは、善意の支援が貧困を深めているアフリカの現実を変えること。 アパレルブランド『CLOUDY』に秘められた、地域振興のあるべき姿について聞く。
略歴
1985年東京都出身。2008年に大学を卒業後、ゴールドマン・サックス証券会社に入社、並行して2010年に特定非営利活動法人CLOUDYを立ち上げる。2015年に退職し、同年株式会社DOYAを設立。アパレルブランド『CLOUDY』とNPO活動との両輪で活動中
「地域を変えるのは「支援」ではない。 相手のモチベーションは何かを考え 仕組みとして導入することで 「共創」が動き出します」
地域が自走するために支援ではなく雇用を作る
大学卒業旅行の一人旅でケニアのキベラスラムを訪れ、テレビの中でしか見たことのない貧困にショックを受けた。だが、当たり前の衣食住がないこと以上に衝撃だったのは、「善かれ」と思って行う支援活動がいかに現地を腐敗させているかを肌で感じたことだ。
「1万枚の服を現地に寄付するようなプロジェクトはよくありますが、それは現地で服を売る人の仕事を1万枚分奪うこと。そうではなく、支援する側とされる側の共創で自走する仕組みを作らなくては発展はあり得ないと思いました」
就職して最先端の金融ビジネスに携わりながら、現地に足を運び、人脈を広げてたどり着いたのは、まず「教育のない女性が自立できる」よう「雇用を作る」という明確な目標。そのためには、助成金や寄付に頼るのではなく、自分たちも自走できなければならない。それも、10%の富裕層が潤うようなビジネスではなく、貧困層の80 %が自走できるビジネス―イメージしたのは戦後の日本だ。
「モノづくりで発展した日本のことを思いつつ現地の風景を眺めていると、女性たちが庭先で縫製作業をする姿があちこちにあった。これなら雇用が作れると感じました」
ちょうどアフリカの生地の魅力を知った頃でもあった。だが、まず生活に根付いた文化があって、アパレルを選んだのはむしろ後付け。それくらい銅冶氏の活動は「雇用を作る」ことを重視している。
埋まらない「許容範囲」の溝をどうやって埋めるか?

「どんな活動もお金がなくては続きません。そしてお金を生むには、ステークホルダーがどう動くのか、誰が事業を動かすのか、誰の手を借りるのかといったことを考える必要がある。まさにビジネスにおける組織の話であり、勤務先で学んだことに助けられました」
実際に始めてみると、商品の磨き上げには多大な労力を要した。最初に作ったポケットTシャツでは、100着作っても売れる品質のものは10着ほど。「何が違うって許容範囲が違うんです。10㎝×10㎝であるべきポケットも彼らの基準では20㎝×20㎝までOK(笑)。縫製技術は上がってもそこは変わりませんでした」
指導を強化すればごまかす力も上がるといういたちごっこの末、気づいたのは「こちらのルールを押し付けてもよくはならない」ということ。そこで改めて「彼らのモチベーションは何か」と考え、2人1組でB品が一番少ないチームに賞金を出すことにした。
「そうしたら各段に出来がよくなった(笑)。要するにそれが彼らの求めていることだったんですね」
こうして作られた製品は今、原宿の真新しい商業ビル内のショップで販売されている。その店頭には、製品が貧困の改善に寄与しているというメッセージは一切ない。
「『伝統』とか『職人』といったワードがあると、若い人は『自分の欲しいものからは遠い』と感じる。売っていくには、消費者の欲しいものであることが何より重要で、そのためにも『途上国』とか『非営利』といった大義名分の『下駄』を脱ぐべきだ、と考えています」
実際、「こうしたメッセージの表示された店に入るか」とアンケートを取ると、8割が「入らない」と回答したという。「よいこと」を押し付けない冷静な見極めに、銅冶氏の「ビジネス」の目が光る。
地域も力を出すからこそ使われ続ける学校が作れる
現在は、「CLOUDY」で生んだ資金も活用しながら学校の建設も進め、すでに8校目を建設中。こちらはビジネスではなくNPOとしての支援だが、「作った」だけで支援が続かず、使われなくなってしまう学校を数多く見てきた銅冶氏は、公立学校として建設し、運営は地元政府に任せる形を貫く。通学のモチベーションは「給食」だ。
「一度は通学し始めても、労働に戻ってしまう子は多い。でも『ここに来れば食べられる』と思えば、親も子どもを通わせるんです」
食材を得るために校内に畑も設け、調理の仕事も雇用に変える。その活動の中で「ガーナの人のたくましさに学ぶことも多い」と銅冶氏は言う。「得意を分け合う」という彼らの姿勢が、新しい共創を育んでいるのだ。


カカオの殻で作った鉛筆(右)は買うと1本が現地の子どもに贈られる仕組みで、買う側も共創に加わったような気持ちになれる。左はブランドの原点ともいうべきポーチ
アフリカンファブリックの鮮やかさが魅力の『CLOUDY』
銅冶氏のブランド『CLOUDY』の製品は、アフリカの伝統柄を使用したビビッドなデザインが魅力。現在はアフリカ製の生地を現地で縫製した製品のほか、ガーナで育ったデザイナーが手掛けたレザーアイテムなども揃える。雇用創出や女性の自立といったソーシャルグッドな側面は、ともすればクオリティの低さを想起させたり、「買わなければいけない」という義務感にもつながるが、そこを可視化しないことで純粋にファッションとして受け入れられている。
