写真家/会社員

toshibo

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朽ちていくものを愛でる価値観を 新たな手法で世に問う廃墟写真家

タイムラインに並ぶ、ダークな空気感をまとった風物の写真。 ありきたりな美しさとは異なる価値や、独自の創作姿勢に、新たな時代のクリエイター像が浮かぶ。

略歴

1988年埼玉県生まれ。20代半ばに始めた珍スポット記録ブログがきっかけで、会社員として働きながら廃墟の写真を撮り始める。国内の撮影旅行へは全て自ら車を駆って出かけ、沖縄県以外の全都道府県を訪問済みだ。

「賛否は分かれるのかもしれない。 ただ、自分がいいと思ったものについて 『そうだね』と納得はさせたい。 だから発表し続けるのだと思います」

写真を撮る背後にある「記録したい」という思い

X(旧Twitter)で日々投稿する写真のテーマは「廃墟」。いわゆる「美しい風景写真」とは違う不思議な世界観が、28万人を超えるフォロワーを魅了する。
なぜ廃墟なのか?という問いには「よく聞かれるんですけど、分からないんです」と困ったように笑う。そして代わりに幼い頃のこんな思い出を話してくれた。
「子供向け番組で、道路に貼り付いているガムを剥がすという企画があったんですけど、それを見てすごくびっくりしたんですよ!『あれ何だろう?』と思っていた『道路にときどきある黒いマル』が実はガムだったとは…映像になって初めてよくないものだったと分かったわけですけど、それが何だか嬉しかったんです」
何かを見て「きれい」と感じることは少なく、負の側面に心惹かれる。そしてそのことを「記録したい」という思いがある。
「昔はいわゆる珍スポットのようなものを撮ってブログを書いていたのですが、それも『記録』したかったんですよね。今も、何かアートとして写真を撮りたいというより、記録のつもりで撮っているところがあります」
撮った写真は、HDR(ハイダイナミックレンジ)という手法を用い、手作業で仕上げる。明るすぎて白飛びしたり、暗すぎて潰れてしまう部分がないよう複数の写真を合成する手法で、出来上がった写真はより人の目で見た状態に近くなる。窓の外の景色や物陰に隠れたものまで微細に伝わる写真。
「崩れていたり、カビが生えていたり、そういうものも全部見せたい」――それは記録のためなのかもしれないが、だからこそ印象的でもある。

分かりすぎないことから生まれる面白さ

写真の投稿に添える言葉は最低限。撮ったものが「どうよいのか」は多くは説明しない。
「分かりすぎちゃうと面白くないと思うんですよね。それより、ざっくり投げて、見る人が想像してくれたらいいな、と」
そんな気持ちで「廃業したドライブインの裏手に隠される様に投棄されていた」との言葉を添えて壊れたクレーンゲーム機の写真を投稿したら、6万近い「いいね」が付いたこともあった。
「マジか、これでか!?と思いましたよ(笑)。『こういうのがアニメの敵キャラになる』なんて、自分では全く考えもしなかったコメントをつけてくれた人もいた。本当に面白かったです」
とくに若い世代には「パッと見せて何かを感じてもらうくらいでいい」とtoshibo氏は言う。そこに見る側が何かを加えることで、SNSを通じた作品は完成するということなのだろうか。

自分がいいと思うものを世に問い続ける

今年は初めてヨーロッパの廃墟を撮影して回ったが、そこで改めて感じたのが日本の廃墟の魅力だ。
「ヨーロッパの建物は基本石造りで、どれも同じような崩れ方をするんですが、日本の建物は木造で、しかも雨が多いので腐ったり苔が生えたりしていく。神社の鳥居など建造物も独特です。日本の廃墟が好きな外国人は多いのですが、それもよく分かります」
個人的にとくに心惹かれるのは、古い部分に新しく建て増しをするなどして増殖した建物群。夏は緑に覆われていたそれが、冬枯れの時季になると朽ちかけた全貌をあらわにする。その様子こそが好きだとtoshibo氏は思う。
同時に、自分の感覚は世の中の主流ではないとも思っている。現在は他に仕事を持ちながら撮影活動を続けているが、写真展への出品やイベント登壇など活動の幅は広がっていて、いっそ仕事を辞めて写真に専念してもよいのではとも思えるのだが、「そこまではしなくてもいい」と言うのだ。
「賛否が分かれる写真なのは分かるんです。自分がいいなと思った場所も、地元の人にとっては嬉しくないものかもしれない。だから批判されることもあります。それでも、いいと思ったものに『そうだね』と納得してほしい気持ちはある。SNSに写真を投稿し続けるのは、そんな気持ちからなのかもしれません」

『変わる廃墟展2020』出展作品より。

SNSで国内外の廃墟の写真を投稿

toshibo 氏はX( 旧Twitter)のほか、InstagramやTikTokなど、さまざまなSNSで作品を発表中。Instagramでは外国人を意識した投稿にしたり、TikTokではショート動画を投稿したりと、メディアに合わせて投稿の仕方も工夫している。写真は国内のものを中心に、アジアやヨーロッパなど海外で撮影したものも。最近はドローンを使った空撮動画にも取り組んでいる。

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