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観光庁
全国20地域で観光コンテンツを創出すると共に
創出手法をモデル化し全国へ横展開する土壌を形成
高まる体験型観光へのニーズをとらえ、
消費機会を増大する観光コンテンツが必要
人口減少・少子高齢化が進む日本において「観光」は経済成長のカギとなる重要な成長分野。
世界の観光需要を取り込み、訪日外国人旅行者の消費による地域活性化・
雇用機会の増大につなげることが重要だ。
こうした背景から政府は2020年の訪日外国人旅行者の消費総額8兆円、2030年には同15兆円の実現目標を掲げた。
しかし2018年時点の消費総額は4.5兆円にとどまり、内訳では体験型観光の消費額が諸外国に比べて低い状況。
世界の旅行形態はモノ消費からコト消費へと変化し、
体験型観光に対するニーズはますます高まっている。
訪日外国人旅行者の潜在的ニーズを把握し、消費機会の拡大が期待できる新たな観光コンテンツを造成すべく、
観光庁は「最先端観光コンテンツ インキュベーター事業」に着手した。
本事業の目的は地域に眠っている観光資源をインバウンド向けに磨き上げ、
稼ぎ続けることが可能な観光コンテンツを創出すること。
さらにはその商品造成~販売に至る事業の「型」を構築し、再現性の高い普及展開モデルを形成することで、
将来的には全国各地で同様に魅力的なインバウンド向け観光コンテンツが生まれるのを目指している。
そのためまずはモデルとなる事業を公募し、全国20地域の事業者を選定。
この20事業者が観光コンテンツを作り上げ、販売する過程をサポートした。
地域に眠る観光の種を見つけて育み、
大きく広げていくコーチングメソッド
各事業者は応募段階で事業企画案を用意している。それを土台として、
事業の魅力を最大化しつつ遅滞なく遂行できるように、
まずは事業実施計画書のフォーマットを用意。事業者が各項目を埋めていくなかで、
事業の進捗状況や作業遅滞の理由・対策、宿泊受入態勢や2次交通の導線といった
事業に必要な周辺環境の現状・課題などが把握でき、事業成功へ向けたフレームデザインの設計が可能に。
滞りなく事業を進める準備が整えられた。
モデル事業の観光コンテンツ完成までには、地域資源と訪日外国人ニーズのすり合わせ、商品開発・磨き上げ、
販売、販売後の検証・フィードバックといった工程があるが、その全工程において
各事業者に専門家が伴走・コーチングを実施。
経営支援の専門家としては経営コンサルタントを招致し、
地域観光プロデュースの専門家としてはじゃらんリサーチセンターの知見を活かすことで、
稼ぎ続けるための観光コンテンツを創出可能なコーチング体制を構築した。
コーチングにあたっては、各事業・地域に関する情報収集や、
宿泊受入状況・プロモーション状況などの事前調査を行った他、
全国各地の20事業者を個別に訪問。事業関係者との面談や、
観光コンテンツの視察、観光導線の実地確認などにより事業と周辺環境の調査・評価した。
そうして課題を発見して改善策を導き出したうえで、実行者である事業者を支援した。
20のモデル事業の状況に応じて、コーチングスタイルは様々。
観光の各領域における専門家にも支援を要請し、また協業できる地域事業者との引き合わせ、
海外ランドオペレーターを通じたツアーの造成・販売を行うなど、JRCが有するリソースを活用して
観光コンテンツの価値の最大化を目指した。
こうして全国20地域に新規観光コンテンツが完成。訪日外国人旅行者の消費機会・消費単価
および満足度の向上が見込める地域へと導いた。
今後はより「稼ぎ続けることが可能な観光コンテンツ」となるよう各事業の成果を検証し、
改善対策支援を行いつつ事業の自走化を目指す。
また今回の20事業の取り組みから見えてきた、観光コンテンツ造成モデルを
全国に横展開していく土壌ができたことも成果と言えるだろう。