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山梨県 富士吉田市 産業観光部 富士山課
観光基本計画を立案する礎となる、
ビッグデータを活用した観光動態調査を実施
よりよい未来に導く施策の立案のため、
旅行者と地域の現状や特性を調査
富士山北麓に広がり、豊かな自然と歴史文化を背景にした観光資源を抱える富士吉田市では現在、新たな観光交流の創出と地域活性化を目指し、2017年10月~2022年3月にわたる観光基本計画の策定に向けて動いている。長期的指針を示す計画をより有効かつ実効性のあるものにするためには、同市における旅行者の実態を把握・分析したうえで施策を練る必要があると考えた。
計画策定を前に、複数種類の調査を実施。同市がもつ地域資源に対する潜在旅行者の認知度や興味度を探って埋もれた資源の発掘につなげるJRCのマーケティング調査「GAP調査」、同市を訪れた旅行者の生の声を聞き取って満足度や要望を拾い上げる「観光地聞き取り調査」、国内および訪日外国人旅行者の行動実態から課題や特性を分析する「観光動態調査」である。
高精度のビッグデータ分析サービスで
発地から周遊先までが明らかに
今回実施した調査のうち日本人旅行者の行動実態を探る「じゃらん観光動態調査」は、JRCが新たに導入した調査分析サービス。近年注目を集めているビッグデータを活用した、この調査分析手法について紹介していく。
使用するビッグデータは、GPSなどにより収集される携帯電話などの位置情報。リクルートライフスタイルが提供する多彩なスマートフォンアプリ会員のうち、位置情報取得の許諾を得たユーザーが分析対象となる。この情報を収集・分析することで、いつどこへ何時間滞在したかといった詳細な「人の動き」が判明。位置情報の取得精度は一定の大きさの四角形で区切った「メッシュ」が単位に用いられるが、本サービスは125mメッシュという高精度であり、市区町村単位はもちろん、どこの施設を訪問したかまで絞り込みができる。また、収集データから個人を特定できる情報は除外されるが、性別と年代はユーザーの許諾を得て取得可能で、ターゲット別の動態を知ることもできる。
こうした位置情報は日々収集・蓄積されているため、改めて調査を行う必要がない。従来のアンケート調査よりも膨大なサンプル数の精度の高い情報を、時間をかけずに得られる点が強みだ。
この調査分析サービスを用いて、本事業では富士五湖地域を周遊する旅行者の動向を重点的に調査した。分析項目は、右ページに挙げた通り。富士吉田市を訪れた旅行者の「発地分析」や「宿泊地分析」などのほか、あらかじめ指定した観光エリアへの訪問者数を調べる「周遊エリア分析」も行い、同じ山梨県内の富士河口湖町や山中湖村、隣接する静岡県御殿場市への周遊状況(訪問人数や性年代別の構成比)を明らかにした。
収集データから地域課題やニーズを考察
観光基本計画の策定へ着実に前進
ビッグデータを活用した観光動態調査は訪門した人数や時間帯といった客観的な事実を把握する手段として優れている一方で、その地域を訪れた理由や、地域・観光資源に対する認知度・満足度や要望といった心理面は読み取ることができない。こうした定性分析に関しては、同時に行った「GAP調査」および「観光地聞き取り調査」にてフォローした。
現在は各種調査を完了した状況にある。これらの収集データからJRCが地域課題や旅行者ニーズを考察し、強化すべき周遊地域の設定や地域活性化のための施策の構築に役立てる。今後は分析内容を踏まえて地域事業者と意見交換を行う委員会を開催しながら、2017年9月の観光基本計画策定へ向けて前進していく。
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