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【リリース】インバウンド市場の注力ターゲット調査2025 注力するターゲット市場の顔ぶれに変化、「香港」がトップ3入り インバウンドに関する課題の1位「二次交通の整備」2位「ガイド不足」

調査背景・目的
観光庁・日本政府観光局(JNTO)は、持続可能な観光・消費額拡大・地方誘客促進の実現に向けて、
2023年に訪日マーケティング戦略を策定しました。
うち、市場別マーケティング戦略にて、一人当たりの消費額や
地方部宿泊数の向上につながる市場別のターゲットなどを、属性等のデータも含めて公表しました。
そこで、『じゃらんリサーチセンター(JRC)』は、市場別ターゲットデータを
全国の自治体・DMO(観光地域づくり法人)に提示して注力ターゲットに関する調査を実施。
具体的な注力ターゲットを可視化することで、インバウンド市場のマーケティングリテラシーの向上や
全国の組織間の連携の一助になることを目指します。本アンケート調査は、 JNTO協力のもと実施しています。

調査概要
◎調査期間:2024年11月14日(木)~ 2025年2月7日(金)
◎調査対象:広域連携DMO、地域連携DMO、地域DMO、観光協会、都道府県庁
◎調査方法:対象組織のインバウンド担当者宛てに調査票を送付してインターネット上でアンケート実施
◎回答数 :147(広域連携DMO/9 地域連携DMO・地域DMO/102 観光協会/5 都道府県庁/31)
◎集計方針:n数が20未満の場合は、集計対象外とする
※2024年度は2023年11月27日(月)~ 2024年2月29日(木) 、回答数=177にて実施

▼調査報告書詳細はこちらから
https://jrc.jalan.net/wp-content/uploads/2025/04/report-inboundtarget2025.pdf

<インバウンド市場の注力ターゲット調査2025トピックス>
注力するターゲット市場の顔ぶれに変化、「香港」がトップ3入り
全国の自治体、DMOが狙っている市場の上位3位は、1位「台湾」84.4%、
2位「香港」「米国」共に58.5%で、前年から順位の変動が見られました。
特に「香港」が今回2位に浮上しています。
加えて 「インドネシア」が前回17位から14位と大きく順位を上げています。


インバウンドに関する「課題」「取り組み工数」のランキング
課題1位は「二次交通の整備」、取り組み工数1位は「コンテンツ造成/磨き上げ」
インバウンドに関する現在の課題は、1位「二次交通の整備」69.4%、
2位「ガイド不足」62.6%、3位「人手不足」59.2%となる。
対して、実際に取り組んで工数がかかっていることは、
1位「コンテンツ造成/磨き上げ」51.0%、2位「誘客/プロモーション戦略」46.9%、3位「周遊促進」32.0%となる。


インバウンドに関する「課題」と「取り組み工数」にギャップあり(ポートフォリオ分析)
課題に感じていることと、実際に取り組んで工数がかかっていることを、
以下4象限で分類したところ、現場のリソース制約を背景とした現実的な優先順位が浮き彫りになりました。
【A】最優先として動いているテーマ
【B】大きな課題だが工数不足でやりきれていないテーマ
【C】長期視点でリソースを投入しているテーマ
【D】優先度は低めだが将来を見据えて取り組みたいテーマに分類。

その結果、【A】最優先として動いているテーマでは
「コンテンツ造成/磨き上げ」「誘客/プロモーション戦略」などが、
【B】大きな課題だが工数不足でやりきれていないテーマとして
「多言語対応」「人手不足」 「人材育成」が、挙げられました。



解説
今回の調査では、「香港」が初めてトップ3に入り、ターゲット市場の変化が見られました。
訪日リピーターの多さや地方空港からの来訪増により、地方部を含めた誘客の可能性が高まっています。
1位の「台湾」と同じ繁体字圏で、効率的にプロモーションを展開できる点も注目されます。
こうした変化に対し、自治体・DMOは広域連携を意識し、
周遊ルートでつながるエリア全体でのプロモーションが重要になります。
加えて、旅行者の移動を支える二次交通のアクセスを可視化することも鍵となります。
また、現場では「多言語対応」や「人手不足」などが課題とされる一方で、
十分なリソースを割けていない実態も明らかになりました。限られた人員で対応するためには、
AIやDXの活用が今後さらに不可欠となります。
例えば熱海市の取り組みでは、AIを活用することで、戦略策定から多言語対応までを効率化し、
最大で15分の1の業務負荷軽減を実現しました。
変化するターゲット市場に柔軟に対応しながら、広域での連携とテクノロジーの活用を掛け合わせることで、
持続可能なインバウンド戦略を築いていくことが求められます。


株式会社リクルート 
じゃらんリサーチセンター 研究員
松本 百加里(まつもと ゆかり)


▼調査報告書詳細はこちらから
https://jrc.jalan.net/wp-content/uploads/2025/04/report-inboundtarget2025.pdf

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