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福島県、中通りエリア、会津若松市芦ノ牧温泉

風評被害にどう対応するか、地域が共同して集客へ

現状を把握、地域が共同し集客施策…
動き始めたALL福島県の観光復興

2011年3月の震災以降、激変した福島県観光の状況。そんな中、観光による福島の復興を目指して、いち早く動きを見せた福島県、中通りエリア、会津若松市芦ノ牧温泉の取り組みをまとめて紹介する。

10月~12月のキャンペーン画面。6回のシリーズ連載企画として、福島県観光の今を現地で支える方々をインタビュー。イベント情報、宿泊券プレゼントなども連動

現状の中通りに対する関心とは?カスタマー意識を調査

うつくしま奥の細道「花・街・道」観光キャンペーン推進協議会がJRCの「GAP調査」の手法を活用し、現状の福島観光および中通りエリアに対する興味関心の傾向や不安要素、旅行意向を調査。今後の来訪に期待が持てる層やPRすべきポイントについての分析を行い、2012年春に実施予定のキャンペーンに向けた材料とした。

新しい芦ノ牧温泉の観光モデルをワークショップで検討

 放射能の影響は少ないが風評被害に見舞われた芦ノ牧温泉にて、芦ノ牧温泉活性化委員会が中心となり、宿泊施設、飲食店、土産物店など地域事業者が共同。春の観光プロモーションで使うキャッチコピー案や需要喚起となる宿泊プラン案、満足度の高いサービス案など、地域の新しい観光の姿を放出。皆の想いを共通言語化し、新しい温泉地再生へと向かう一歩につながった。

官民が連携し、秋・冬期に2大観光復興キャンペーンを実現

 個人手配旅行者の拡大を狙って昨年秋・冬に「じゃらんnet」「関東・東北じゃらん」を活用したキャンペーンを県および福島県観光物産交流協会・うつくしま観光プロモーション推進機構が展開。秋は福島を立て直そうと奮闘する地域事業者へのインタビュー記事や、女将が感謝の一杯をおごるプラン等の特別宿泊プラン造成を実施。また冬は弊社プロジェクト「雪マジ!19」と連携した県事業「雪マジ!ふくしま」を展開。20〜22歳まで県内16ゲレンデにてリフト券無料特典が得られる若年層の旅行需要獲得を実施した。「本キャンペーンは、この状況下でがんばっている人の姿を通して、福島県民の決意をまずお伝えしたい、そんな思いで企画させていただきました」と同協会観光部総合企画担当部長・吾妻嘉博氏。福島の観光復興はまだこれからだ。

中通りエリアにてGAP調査を実施。地域間共有のための報告会も開催

中通りエリアで毎春に開催する「花・街・道」観光キャンペーンの実現に向けて、カスタマーの中通りへの観光ポテンシャルの把握を行う「GAP調査」を実施。さらにその調査結果を12月に行政・地域事業者を集めて報告会として共有。プログラムには、じゃらんnetデータに見る「震災後の観光宿泊者の傾向と実態」や、調査結果を踏まえたPR展開アイデアも加え、今後の展開案を提供した。

異なる事業者たちが新アイデアを出し合い、温泉地再生の一歩へ

風評被害を乗り越え、地域間で協同しながら地域再生に向かうため、芦ノ牧温泉エリアでは40名以上の事業者が集まり3日間のワークショップ(旅づくり塾)を開催。宿泊プランの作成チーム、滞在客の満足度アップにつながるサービス・体験を検討するチームなど分科会形式を取りながらアイデアを出し合った。

風評被害を払拭するための正しい情報発信と、宿との連携に注力

福島県観光物産交流協会・うつくしま観光プロモーション推進機構は、震災の影響で落ち込んだ観光需要の復興を目指し、まずは動きやすい個人手配旅行者の送客アップを狙ったPRキャンペーンを2011年10月~12月にかけて、じゃらんnetにて展開。震災以降も福島の観光のために日々奮闘するフラダンサー、農家、山岳ガイド、宿の女将といった地域の観光事業者たちをインタビュー連載企画で紹介。福島の今を支える彼らの生の言葉と、現状のリアルな放射能情報へのリンクを掲載することで、風評を軽減し福島を観光で応援したいと考えるカスタマーからのアクションを狙った。また来訪者の受け皿となる宿も特別宿泊プランを造成したほか、計28軒の宿が無料宿泊券提供に協力。本特集を読んだカスタマーに対してプレゼント企画を実施した。これには800名以上の応募が集まり、中には「福島県を観光で支援したい」といった温かいコメントも多かった。
さらに冬季は若年層のスノー需要喚起を狙った「雪マジ!ふくしま」キャンペーンを展開。PRは属性ターゲティングが肝なのでSNS広告や学生生協とも共同でPRを実施し新ターゲットの獲得を行った。
「原子力損害賠償紛争審査会の資料によると97%の方が『福島を訪れたくない』といいます。これは観光云々のレベルではなく、福島が差別を受けている、といっても過言ではない状況。これを打開するには、まず可能性のある3%の方々に福島の生の姿を来て見ていただき、感じたことを発信していただく、これしかない。長い道のりですが折れずにやり続けます」(同協会・吾妻氏)
じゃらんnetでの福島県宿泊予約実績データは、8月時点で人泊数ベースにて昨対比41.3%と非常に厳しい状況であった。しかし、12月時点で対前年比89.8%まで回復。宿泊件数としては、2010年同月よりも高い宿泊実績を記録した。とりわけ震災被害の少ない会津エリアなどは対前年比100%以上に回復し、明るい兆しとなった。県、市町村、民間の観光事業者、地域のひとり一人…それぞれの取り組みが福島県の観光復興に向けた大きな一歩へと繋がっていく。2012年度の躍進に期待しながら、JRCとしても継続的に支援していきたい。

芦ノ牧温泉にて、全3回にわたって開催されたワークショップ「旅づくり塾」。地域の観光事業者が集まり、地域ならではの提供サービスのアイデアを出し合った
2011年12月に「花・街・道」観光キャンペーン推進協議会が郡山にて「GAP調査」結果の報告会を実施。40名以上の地域の方々が参加

【取り組んだ地域の方々】

福島県観光振興課/福島県観光物産交流協会/うつくしま観光プロモーション機構/うつくしま奥の細道「花・街・道」観光キャンペーン推進協議会/芦ノ牧温泉活性化委員会

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