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国土交通省 中国運輸局 観光部 観光企画課、一般社団法人 せとうち観光推進機構
観光分野の知見をもつ専門家集団11人が集結!
インバウンド向け観光コンテンツをブラッシュアップ
広域観光周遊ルートの年600万人泊達成へ向け
欧米豪の訪日外国人旅行者の誘客を
訪日外国人旅行者の周遊を促進して地域の活性化を目指すため、観光庁では広域観光周遊ルート形成促進事業を進めている。その第一弾として2015年に認定された「せとうち・海の道」は、瀬戸内海に面した7県29市町にまたがる周遊ルートを形成している。当該エリアの2015年時点の年間外国人宿泊者数は260万人泊。2020年には600万人泊との目標を掲げ、達成に向けてプロモーションや観光コンテンツの開発に取り組んでいる。
「せとうち・海の道」は第1ターゲット層を、ボリュームが大きく中長期滞在を好む、時間的・金銭的に余裕がある欧米豪の旅行者と設定した。海外旅行市場が成熟した欧米豪諸国は知的好奇心・探求心が高い旅行者が多く、瀬戸内が有する歴史や伝統、現代アートといった観光資源との親和性が高い点も第1ターゲット層にした理由だ。しかし現状はアジア圏からの外国人宿泊者が占める割合が大きく、欧米豪向け対策が十分とはいえない。そこで当該エリアの観光コンテンツを欧米豪の旅行者ニーズにマッチするよう進化させる取り組みを始めた。
専門家の知見×調査に基づくニーズ反映で
ターゲットに刺さる観光商品へと昇華
本事業の大まかな流れは、まずエリア内からターゲットである欧米豪の旅行者向けの観光コンテンツを選出し、ニーズ調査結果などのフィルターで絞り込みをした後、厳選された観光コンテンツの企画(事業計画づくり)を行う。策定した企画に対するモニターツアーなどのテストマーケティングでターゲットの反応を見たうえで、さらに改良(ブラッシュアップ)して旅行商品化を目指すもの。肝となるのは観光コンテンツの企画(事業計画づくり)で、欧米豪の旅行者の求めに応えられるもの、マーケットインの観点で行うものでなければならない。そこで魅力的な企画づくりに向け、11人の専門家を招集した。この11人は地域ブランディングや誘客、観光戦略立案などの分野で活躍する人々。彼らが知見を持ち寄り、観光コンテンツの見立て(選定)を行った。
観光コンテンツの選定の初期段階では、354件もの候補が挙げられた。そこからターゲットに合わせて絞り込みを行うため、「訪日外国人旅行者のニーズ調査」を実施。瀬戸内エリアの訪日外国人旅行者1000人に対する聞き取り調査により、観光コンテンツの認知度や経験意向などのデータを収集し、実際の外国人の意見を選定基準として活用した。このほか専門家による企画のおもしろさや伸びしろといった評価、「フォトジェニックである」「地域ならではの体験」などの共通項目の評価を経て、最終的にブラッシュアップ対象の候補は31件に。そしてデータ分析や選定時の評価から見えた、各企画の課題の解決を図る具体策を専門家が練り上げた。この過程では、元は別々に提供されていたコンテンツ同士を組み合わせてより魅力的な周遊プランにしたり、従来は低価格帯・短時間で提供していた体験商品の内容を充実させ価格も上げたものにするなど、「時間的・金銭的に余裕がある知的好奇心が高い欧米豪の旅行者」というターゲットに合わせて企画を構築していった。
その後、専門家が現地に赴いて観光コンテンツの実施事業者に対して提案。事業者の方々の意見も取り入れて誕生した31案の観光コンテンツは、順次モニターツアーを実施した。モニターには欧米豪の旅行会社に加え、商品化した際に海外旅行会社との橋渡し役となるランドオペレーターを招いた点も特徴だ。今後はモニターツアーを含むテストマーケティングの結果を検証・反映し、商品として提供可能な観光コンテンツを目指していく。