じゃらんリサーチセンター(JRC)のスペシャル座談会
じゃらんリサーチセンター(JRC)では、観光産業に携わる方々と意見交換会・座談会などを行っております。ここではその一部をご紹介してきます。
■座談会(2008年11月13日)
地域一体となった取り組み事例の共有と
宿泊マーケットの課題と今後の展望について

2008年11月13日(木)、全国旅館生活衛生同業組合連合会会長 佐藤信幸氏と、青年部部長の永山久徳氏に地域での取り組み、今後の宿泊マーケットの課題についてお話をうかがった。
全国旅館生活衛生同業組合連合会 会長
日本の宿 古窯 代表取締役社長 佐藤信幸 氏
全国旅館生活衛生同業組合連合会青年部 部長
ゆのごう美春閣 代表取締役社長 永山久徳 氏
株式会社リクルート 執行役員 旅行カンパニー カンパニー長 冨塚 優
株式会社 リクルート 旅行カンパニー じゃらんリサーチセンター センター長 沢登次彦
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沢登
今回の座談会のテーマは、『地域一体となった取り組み』について、そして『宿泊マーケットにおける課題と今後の展望』について、お話をお伺いしていきたいと思います。
冨塚
もともと、我々のじゃらんリサーチセンター設立時には、まだまだ業界の実態を把握できるデータが存在していなかったり、マーケットの全体像が不明瞭な状況でした。その状況を変えて、このマーケットに貢献していくためには、「地域に人を送る=人を動かす」という課題と「魅力的な施設づくりへの支援・協力」が大きなテーマでした。そのために、エリア間の人材流動という視点や、また、1エリアではなく『集まった単位としての観光圏』という見え方を意識した視点が必要だと感じています。まさに、今日のテーマと一致する内容だと思います。
沢登
では、地域一体となった取り組み事例として、佐藤様から『かみのやま温泉』のケースをお聞かせいただけませんでしょうか。
佐藤
我々のエリアでは、『かみのやま浴衣祭り』というものを実施しています。60周年を迎える戦後開湯の葉山温泉と、550年の歴史をもつ上山(かみのやま)温泉の二つの温泉街が、一つに合併するきっかけとなった取り組みです。若い女性観光客の方が、浴衣を着て温泉街を歩く姿を見かけたときに、実にワクワクした感じを受けました。『浴衣で街を歩く』という行為はワクワク感のあることなのではないかという印象をなんとか企画にして実現したいと考え、発案したんですね。その後は、街全体のバックアップもあり、市役所では、浴衣DAYを設定して、その日は全員浴衣を着る日とし、駅長さんも浴衣姿です。観光業界にとどまらず、まさに地域一体となって発展していったものです。
永山
私たちの『湯郷温泉』でも、地元の酒屋、建築業、イベント業などの方々と一緒にイベントを 実施しています。地域のことはかえって自分たちだけではわからないものです。たとえば、宿から歩いていけるほど近くにたくさんの蛍が飛び交っているエリアがあります。しかし、地元の人にはふつうのことで、その素晴らしさがわからなかったのです。お客さまからみたら、そのことにびっくり! 国内にも蛍を活用している地域があるので、他エリアでの活用事例やコンセプト作りなどのヒントを参考にして地域の資源として育ててきました。まさに『蛍は財産』だったんですね。まだまだこうした財産が眠っている可能性がある。様々なアプローチの方法やアイディアを、もっともっと出し合っていきたいですね。
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「地域力」を借りれば、新しい集客ができる
冨塚
地域の資源開発の方向性も時代とともに変化してきていると思います。昔は、団体旅行中心で皆が楽しいことが重要視されました。しかし今の時代は、『誰と行くか』『どんなシーンで行くか』が最も重要になってきている。たとえば、妻の両親と行くなら、とか子供がいるかいないか、などそのシーンによって魅力のポイントが変化しています。どこに行くかというエリア選択ではなく、誰と何をしに行くのかという目的の選択基準が、コンテンツ開発の視点になっているんですね。その上で、地産池消や自然環境、祭りなどのイベントも見ていかなくてはいけない時代になってきていると思います。
沢登
弊社が発行している『とーりまかし』の事例ですと、熱海のケースがあります。熱海で何ができるのかについて資産の棚卸をした時に、知られていないけれど興味があるものに着目しました。そのひとつに『サンビーチ』がありました。しかしこのサンビーチには、『人口の海でありながら水質はダブルA評価』、『禁煙ビーチ・サーフィン禁止を実施』、『ベビーカー対応に取り組む』など、魅力的な要素があったのです。仮に、乳幼児を抱えた若いファミリー層をターゲットに考えてみると、まさに最適なビーチとなったわけです。
佐藤
そうですね。従来、観光に対しては、業界の範囲内にとどまっていたことが多い。風光明媚だけでは集客できなくなった時代だからこそ、地域のポテンシャルを広い範囲に広げて、もっと力を借りればいいと思います。農家の方々の知恵や、地元の踊りを披露したい人たちなど『地域力』を借りることで、新たな集客が可能になってくると思います。
永山
同じ観光地でも、施設によって役割分担が明確になってきましたね。地域全体で、デパートになる必要がある。誰と何をするかによって、デパートのどの階に行くかをお客さまが選ぶ。そんな状況が理想の形なのではないでしょうか。
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いろいろな切り口のプランを出し続ければ、人の動きが見えてくる
佐藤
こちらからの質問ですが、インターネットの時代になって、じゃらんさんが推奨できるビジネスモデルになるようなプランの事例などはありますか。
沢登
具体的な宿の事例ではないですが、成功されているケースは、プランを作っている人がどれだけ楽しんでいるのかが明確にわかるものです。ネット上だからこそできる、プランの出し引き、つまり、プランを出すことでマーケット的な人の動きが見えてきます。そのことに魅力を感じて、モチベーションもアップし、いろいろな切り口のプランを試していくこと。まずは、プランを出し続けることが大切ですね。
冨塚
まさに、プランに基づいて、あとから部屋がついてくる。通常はまず部屋の広さなど、部屋ありきで考えますが、プランありきで考える考え方は、世界的に見ても日本は進んでいると思います。また、価格設定にしても、従来は売れないから安くするというのがベースでしたが、昨今の航空チケットの早割りの例にあるように、今では当日の方が高い。先に予約をうめてくれた方が安くなるというやり方も出てきています。ただし、宿泊業界においては、一施設だけが先行しても、業界全体の足並みがそろわないと、なかなか実現できませんけれど。
佐藤
これからのビジネスモデルとして目新しいものはどんなものですか。我々としては、売り上げを上げることが大きな課題でもあるので、たとえば年間売り上げ1位の宿を表彰するなどの情報開示が欲しい面もあります。多様なお客さまへの、個別サービスは大切ですが、個々のコストアップにつながる事が、経営上の問題となっています。
冨塚
その点については、これからの共有課題として一緒に取り組みたい点ですね。
沢登
カスタマーのクチコミ情報をうまく活用して、施設サイドへフィードバックしていくような取り組みは考えています。旅行マーケット全体を拡大していくような動きを取っていきたいですね。では、次に『人材』という観点でのお話をお伺いしたいと思います。
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若い世代への魅力発信、現場視点を持った管理者が必要
佐藤
経営のためには、管理能力が問われてきています。サービス・接客と調理場は、別々の動きをしているのが現実です。しかし、これからは、両方の視点を持ち、管理していくことができるマネージャーとしての管理職が必要ですね。
永山
圧倒的に足りないと感じているのは、若い人です。以前に組合連合会の青年部で高校生を対象に聞いたことがあるのですが、基本的にホテルと異なり、この業界は対象外。旅館ビジネスについても関心がうすいとういうのが実態でした。旅館文化というものが、うまく若い世代に伝わっていないと思います。旅館業界のビジネスは、まさに自己実現を可能にしてくれるものと思っています。なぜなら、衣食住、接客、マネジメントなどのプロになっていくわけですから、どの業界でも必要なスキルが自然に身につく仕事なんですね。そうした魅力を伝えきれてないのかも知れません。また、企画を考えるにしても若い世代のニーズ、逆に60代のご要望などにお応えしていくためには、あらゆる年代の人がバランスよくいることも大切ですね。
冨塚
いまや大卒60万人の時代となり、大卒の就職希望者の価値が変わってきています。ホテルマンや接客の分野のイメージは高くなってきていますし、女性の活用を考える上でも重要な業界だと思います。
佐藤
その意味では、採用できないという状況よりも、労働時間等の問題があり、正社員を中心に採用していくと、人件費の採算が取れないという現状があります。作業そのものの分業化やピーク時の時期的な対応を考えると、正社員よりもスタッフ的な採用になってしまう。仕事を分類して簡素化することで、ルール作りや仕組み作りが可能になります。先輩の教え方の違いや人間関係で会社をやめるような状況を変えていくことができます。人事に対するアンケートを取ると、接客などの現場の人員が足りないという結果になりますが、現場の仕事をできるだけ、ルール化、仕組み化できれば、管理能力の高い人材が一番必要になってくると思います。
永山
最後にひとつだけ言うと、ゲームのWiiには、やられたという感じがしています。おじいちゃんと孫など、どの世代の組み合わせでも楽しめる、誰もが楽しい時間を共有できるという視点でいけば、本来、宿泊業界が取り入れるべき観点であったと思うからです。そういう意味では、誰と来ても楽しめるコンテンツをもっともっと考えていくべきだと思います。
沢登
観光庁もでき、今はチャンスの時期だと思います。これからも、あらゆる面で協力しながら、旅行業界を活性化するために進んでいきたいですね。今日は、役立つお話をありがとうございました。

