地域コ・クリエーション研究

「コクリ!」とは、日本と地域の未来のために垣根を越えたコ・クリエーション(共創)を実現、推進する活動です。コクリ!キャンプ(共創イベント)、コクリ!ラボ(地域横断学びの場)、全国の種火情報は、こちらから!▼

地域コ・クリエーション研究が分かる事例コンテンツ

地域コ・クリエーション研究の内容については下で詳しく説明していますが、先に事例コンテンツを紹介します。事例を通して、地域コ・クリエーション研究に触れていただけたらと思います。

  • 新しい行政・地域のあり方研究(和歌山県有田市)
  • 地域発新事業創出研究(熊本県南小国町)
  • コクリ!ラボ(地域コ・クリエーションラボ)

2013年以降に実施した、3つの大きな研究成果を紹介します。

和歌山県有田市では、〈①エンジンチームを作る〉〈②「土を創る」〉研究の
 新たな代表例の一つとなる「新しい行政・地域のあり方研究」を実施しました。

熊本県南小国町では、“いち黒川”わっしょいプロジェクトに続き、〈③仕組みを創る〉プロジェクトとして、NPO法人南小国町まちづくり研究会「みなりんく」と共に、新たに「地域発事業創出研究」を行いました。

「コクリ!ラボ」は、多くの地域が学び合い、つながり合い、
 多層的にコ・クリエーションするまったく新しい場です。
 今後も年4回、定期的に開催する予定で、参加地域は続々と増えています。

これらをダイジェスト映像にまとめると同時に、『とーりまかし』38号で紹介しています。
また、研究員・三田が、「経済産業省・地域ストーリー作り研究会」の委員となった際、
南小国町・黒川温泉で取り組んできた3年間について、委員会で発表しました。
併せて紹介します。

●ダイジェスト映像

「とーりまかし」vol.38[PDF 3362Kb]
経済産業省・地域ストーリー作り研究会発表資料[PDF 2402Kb]

みんなゴト文化創り(熊本県黒川温泉/南小国町)

2011年から、熊本県黒川温泉及び南小国町と共にいくつかの研究を進めてきました。なかでも2012年~13年に行ったみんなゴト文化創り(“いち黒川”わっしょいプロジェクト)は、地域コ・クリエーション研究の〈①エンジンチームを作る〉〈②「土を創る」〉プロジェクトの代表例です。まずは5分で分かるダイジェスト映像をぜひご覧ください!

●ダイジェスト映像

“いち黒川”わっしょいプロジェクトの全体像と詳しい内容は、
『とーりまかし』33号に掲載されています。また、他のサイトでも紹介されました。
ぜひ併せてご覧ください。

●プロトタイプムービー

“いち黒川”わっしょいプロジェクトでは「プロトタイピング(まずは試しにカタチにしてみる!)精神」で進めてきました。“いち黒川”の言語化、未来新聞、即興劇など、いろいろカタチにしてきましたが、こちらは「サービス案を、“試しにムービーにしてみた”」もの。黒川の人たちが、自分たちで絵コンテを書き、出演し、創ったプロトタイプ・ムービーです。

黒川は温泉だけでなく、“ヒト”も面白いから巡ってみようサービス
近隣農家の「安心安全・朝どれ野菜・赤牛(トリプルA)」を使った、新鮮BBQ。地元民が楽しむ場に、都市からの若夫婦が招待されて・・・
人付き合いに不慣れな若者が、黒川温泉で人の温かさに触れていく・・
やっぱり、黒川はお湯めぐり。巡る度に入湯手形の色が変わる

行政コアチーム創り(熊本県上天草市)

企業版・地域コ・クリエーション研究として「次世代経営者育成プログラム」も実施しています。
地域の基幹産業である旅館・ホテルの経営者の方々と何度もセッションを行い、半年間、彼らが自らの旅館・ホテルの「みんなゴト化」を進め、「地域イノベーション」に挑むプロセスに伴走します。

●ダイジェスト映像

「とーりまかし」vol.32[PDF 5863Kb]

地域コ・クリエーション研究とは

この研究は、地域にコ・クリエーションのムーブメントを起こし、地域を元気にすることが目的としています。最も特徴的な点は、リクルートをはじめとする都市の人々・企業と地域の人々が、対等の関係で価値を提供し合いながら、地域に創造の火をつけていくことです。

 地域コ・クリエーション研究は、大きく次の2フェイズに分けて行っていきます。

フェーズ1[みんなゴト化]

 エンジンチームを創る
 最初に中心となる「エンジンチーム」を結成し、土創りサイクルをしっかり伝えます。意欲の高い人なら、メンバーは誰でもかまいません。
 「土」を創る
 エンジンチームが中心となって地域内の人々に土創りサイクルを伝播・浸透させていき、地域に共感・共鳴が起こりやすくなる土壌を創ります。また、地域外とのつながりも適宜結んでいきます。土創りが進むと、アイデアの「芽」が数多く出てくるようになります。

フェーズ2[地域イノベーション]

 仕組みを創る
 アイデアの芽を枯らさないため、継続的に実行するために、芽から仕組み(組織、営利・非営利事業など)の「苗木」を創ります。その際、都市・他地域とのつながりを増やし、画期的な創造の可能性を高めます。そして、仕組み自体が土創りサイクルを地域に根づかせながら、苗木を育てていきます。
 好循環の地域へ
 数々の仕組みが「木」に育つ頃には、その木の「実」が地域に実り、つながり、人材、経済の好循環を生み出しているはずです。

地域コ・クリエーション研究の武器① 土創りサイクル

 JRCがそれぞれの地域に提供している価値は、主にふたつあります。ひとつは「土創りサイクル」、もうひとつは「都市・他地域とのつながり」です。

 一番の武器となるのが、「土創りサイクル」(図1)というものです。これは、パーソナル・コーチング、システム・コーチング®、U理論、フューチャーセッション、ホールシステム・アプローチ(AI、OST、ワールド・カフェ)などの組織変革手法を基に、私たちが独自に創り出した「思考・行動の型」。これを地域の人々に浸透させ、習慣づけしていくことで、地域のコ・クリエーションを活発にしていくことが私たちの研究の中心的な活動です。土創りサイクルは、地域コ・クリエーション研究の「エンジン」と言えるでしょう。

 具体的には、地域内外の人々と「セッション」(1名から数百名での対話)を行うことで、土創りサイクルを広めていきます。セッションではさまざまなテーマの下、数時間で土創りサイクルを一回転させます。これを何度も体験してもらうことで、土創りサイクルが身体に染み込んでいくことを狙います。

 また、参加者の選定、準備、フォローなど、セッションの前後に行う多くの行動や決断も、同じくらい重要な成長の糧となります。土創りサイクルが、なぜ地域を変えるのに効果的なのか。そこにはいくつかのポイントがあります。土創りサイクルの各ステップと共にご紹介します。

❶〈想いに目覚める〉と、「自分ゴト」で考えるから
 土創りサイクルでは、まず一人ひとりが自分の心・内面を見つめ直し、自己の奥底に眠る地域への想いに目覚めるよう促します。すると、人々は地域の課題を他人ごとではなく、「自分ゴト」として捉えるようになっていきます。
 もともと、ほとんどの人が「地域を良くしたい」という想いや地域への愛着をもっています。しかし、普段はその気持ちに蓋をしている人や忘れている人が多いのです。彼らがその想いに目覚め、自分ゴトで物事を考え始めると、地域に対する問題意識が俄然高まり、内発的動機で動き出します。この「自分ゴト化」が変化の第一歩です。

point

人の「潜在的な可能性」に注目し、信じる
どのような人にも「潜在的な可能性」があると私たちは考えます。地域では、役割や関係が固定されがちで、秘められた可能性が見過ごされていることが多くあります。一人ひとりの未知の能力を引き出していくことも、私たちが重視するポイントのひとつです。
❷〈深くつながる〉と、「関係の質」が高まるから
 次に、セッションに参加する地域内外の人々と互いによく理解し合い、また地域そのものと深くつながることを促します。土創りサイクルでは、常に関係・つながりの質の向上を狙っています。地域内の連携力、行政と民間の連携力、周辺地域との連携力、企業や都市との連携力を高めるためです。関係の質が高まるだけで、課題解決に向けて前進することも多いもの。
関係の質が成功の好循環を生む
ダニエル・キム氏(元MIT教授)が提唱する「成功循環モデル」(図2)によれば、思考、行動、結果の質は「関係の質」に大きく左右される。関係の質を高めることが、思考、行動、結果の質を高める好循環を生み出します。私たちは、関係の質の向上を重視しています。

point

❸〈本質を悟る〉と、「みんなゴト」になるから
 3ステップ目に、自分ゴトとして捉えた地域課題についての思いや考えを皆で持ち寄り、共有し、対話します。すると、地域課題の「本質」、課題が起きている真の理由や原因、解決の方向性などが見えてきます。その過程で、自分ゴトが「みんなゴト」に変わっていきます。
❹〈北極星を創る〉と、「未来思考」で考えるから
 皆で本質を悟った後、今度は「北極星(ありたい未来)」を皆で定めて共有し、未来思考で地域を考えます。20年後、10年後、1年後といった形で段階的に考えていくと、北極星はより具体的に見えてきます。これは、どうしても保守的になり、挑戦を避けてしまいがちな日常を乗り越えるために欠かせないプロセス。北極星を創る習慣を身につけると、議論が前向きに進められるようになります。

point

未来思考で理想の地域を追求する
私たちは「未来思考(図3)」を重視しています。未来思考とは、「ありたい未来(北極星)」、つまり考えるだけで楽しくなり、力が湧いてくるような未来、本当に皆が実現したい未来を皆で設定・共有し、そこに到達するために何をしたらよいかを各々が考え、行動することです。「正解のない時代」だからこそ、北極星を設定しないと結局は成り行きの未来に留まってしまうことが多いのです。皆で制約や困難を乗り越え、地域に変化を起こし続けるためには、北極星の力が欠かせません。

❺〈化学反応を起こす〉と、「創造」が起こるから
 皆が地域の課題を自分ゴトとして捉え、質の高いつながりが増え、北極星を共有すれば、地域内にもともと備わっていた多様な知識・アイデア・技術などが自然と交差し、ワクワクする化学反応、つまり創造が多様に起こるようになります。そこに地域外の人・企業の存在があれば、クリエーションの可能性はさらに高まります。また、この段階になると、参加者の挑戦意欲は十分に高まっています。「やりたい」サイクルに入っているからです。

point

「やらねば」サイクルから「やりたい」サイクルへ
創造性を高めるには、「やらねば」サイクルではなく、「やりたい」サイクル(図4)によるポジティブアプローチが欠かせません。土創りサイクルでは、人々が「やりたい」サイクルに入ることを常に促します。

❻〈一歩踏み出す〉と、「変化」するから
 最後に必ず、全員に一歩踏み出すことを促します。踏み出せば、何かが変わるからです。創造を計画に留めず、実際に変化を起こすためには、失敗してもよいから踏み出す一歩が欠かせません。この研究で「プロトタイピング(試行)」を重視するのも同じ理由です。試しに実施してみると、成功要因や課題点が明確になり、何より次へつながる推進力となります。この踏み出しの積み重ねが、北極星を実現するのです。

point

ワクワクと経済の両立を目指す
素晴らしい仕組みも、経済の循環や利益がついてこないと長続きしません。
私たちはワクワクと経済の両立を目指し、楽しく持続的な地域創りを伴走します。

地域コ・クリエーション研究の武器② 都市・他地域とのつながり

私たちが提供する価値の中心は「土創りサイクル」ですが、さらに地域のコ・クリエーションを活発にするには、別に「ガソリン」が必要です。それが、「都市・他地域とのつながり」です。

地域内で関係の質を高めるだけでも、一定の効果はあります。いくつかのイノベーションが起こり、地域は着実に変わっていくでしょう。しかし、一地域だけで起こせる変化には限界があることも確かです。

そこで私たちは、タイミングを見計らいながら、私たちのコネクションをベースに「都市・他地域の人や企業とのつながり」を適宜地域に提供しています。これもまた私たちが地域にもたらすことのできる重要な価値だと考えています。

都市・他地域の人や企業が、その地域になかったアイデア・知識・思想・技術・経験・資金・施設・ものなどを持ち込むことで、コ・クリエーションの旋風が巻き起こる可能性は一気に高くなります。また、つながりがつながりを呼び、関係の輪が拡大していく効果も見逃せません。都市と地域、地域と地域が出会うところに、ワクワクする創造が数多く生まれるのです。

担当研究員について

研究員

三田 愛(さんだ あい)

人材総合サービス部、人事部、海外提携・事業開発Gを経て、2011年4月より現職。人材育成・組織変革を専門とし、地域に眠る力を引き出す「地域コ・クリエーション(共創)研究」に従事。自身が地域創発ファシリテーターを務め、垣根を越えた連携「みんなゴト」化と、事業創造「地域イノベーション」を促進し、自走型の地域活性を実現。米国CTI認定プロフェッショナル・コーチ。

●三田がETIC.のサイトで紹介されました。