研究員コラム未来を創ろう。

2015/02/17

研究員: 山本 祐司

若者に旅の原体験を!地域一体となったリピーターづくりへの挑戦

「伊勢神宮」という日本有数の名所を持つ三重県伊勢市は、20年に1度の神宮式年遷宮により、2013年には1,420万人という参拝者数を記録した一方で、リピート旅行者の高齢化、修学旅行者の減少や若年層の旅行離れが進むことにより、今後の伊勢への来訪者数が減少し、地域経済が後退していくことに危機感を持っていた。

そこで、2012年10月より伊勢市と協働で、2014年4月から4年間の「伊勢市観光振興基本計画」策定を進め、携帯電話の位置情報データによる観光周遊の実態調査や、認知×興味のGAPを分析するWEBアンケート調査、組織診断メソッドを用いた観光事業者のコンディション(地域力)の可視化など、これまでになかった新しい手法を用いて課題を明確化し、新計画を策定した。

その中で、次のような課題や可能性が浮き彫りになった。

 

●多くの来訪者の宿泊地が伊勢市外である(=実は6人に1人しか、伊勢には泊まっていない)

●周遊が地域全体へ波及せず固定的である(=多くは神宮エリアしか訪れていない)

●観光客の滞在時間が短い(=神宮への参拝が終わると、多くが伊勢を出て行ってしまう)

●認知が特定資源に偏る一方、関心の高い資源やエリアが埋もれている(=伝統と新しさが融合するポテンシャルが高い食資源やエリアの存在)

 

そこで、これらを解決するために新計画の初年度である2014年度に協働で取り組みを開始したのが、若年層をターゲットとした「初TABI」キャンペーンである。伊勢を訪れるきっかけがなく、リピーターにもなり得ない現状に対して、若い時に一度伊勢を訪れてもらい、現地で素晴らしい旅の原体験をしてもらうことで、再来訪意向を高め、その後の人生の中で様々な形態でリピートにつなげることを狙う。

 

自治体や地元の観光事業者と協働で、外からの「誘客」のみならず「周遊・現地消費」までの一気通貫となる施策を展開。リクルートライフスタイルの旅行ノウハウや最新サービスも組み合わせ、現在伊勢では次のような取り組みを行っている。

 

●伊勢での宿泊客の獲得 = 伊勢市内の宿泊予約で使えるクーポン配布、初TABI宿泊プランの造成

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●LTVの高い若者の獲得 = 若者行動支援アプリ「マジ☆部」上での集客、現地100店舗以上で使える特典提供

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●現地消費の促進  = 市内全域80施設へのPOSレジアプリ『Airレジ』導入×旅行者へ伊勢の観光で使えるポイント付与キャンペーンによる、地域での周遊・消費のきっかけづくり

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●2次交通の課題解消 = 地域事業者と協働したレンタカー、周遊バス、レンタサイクルの無料・大幅割引

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●積極的なプロモーションによる認知拡大 = プロモーションパートナー電通と協働でテレビ番組制作、動画配信などの大型プロモーション展開

 

『初TABI in 伊勢』キャンペーンは現在目下進行中であるが、宿泊クーポンで予想を超える宿泊予約が入った宿泊施設や、若者に人気で多く訪れられている特典施設などが多く出てきており、既に現地の事業者と初めての旅の若者との間に旅の原体験となるコミュニケーションが生まれている。一人でも多くの若者にまだ知られていない本物の伊勢を通じて旅の魅力を感じてもらい、若者の旅行需要の喚起につなげていきたい。

 

「初TABI in伊勢」キャンペーンサイト(じゃらんnet内特設ページ)

http://www.jalan.net/hatsutabi/

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山本 祐司

地域資源・商品の新たな情報発信・流通手法の研究、地域と組んだ若年層旅行支援プロジェクト「初TABI」を担当。入社後、創業期のICT子会社へ出向し、SNS等口コミを活用した自治体PR支援を立ち上げJRCへ。位置情報分析による観光動態調査等の商品開発や、自治体の観光振興基本計画策定に従事。2014年4月より現職。