研究員コラム未来を創ろう。

2015/01/14

研究員:ヒロ中田

進化するホテルのバイキング

本格的な人口減少時代を迎え、各宿泊施設は生き残りを賭けて懸命に努力している。その注力ポイントのひとつが食の魅力創造だ。

ここでは、地方の大型温泉ホテルを念頭に、バイキングについて述べてみたい。

 

10数年前であれば、バイキングは種類と量を確保することで勝負できた。たとえば「和洋中80種類のバイキング、思う存分食べ放題!」という訴求である。しかし、それも今では通用しなくなった。どのホテルも似たり寄ったりで、種類と量だけでは胃を満腹にさせることはできても、心を満足させることが難しくなったのだ。

この数年、バイキングは変わりつつある。4つのうねり(潮流)を見てみよう。

まず一つ目は、「地産地消化」の流れである。地場産という顔の見える食材を使用することで地域性を表現できるし、宿泊者もそれを求めるようになった。

二つ目の流れは、「料理の実演化」。お客の立場で言えば、料理を作っている場面を見ると楽しいし、出来立てほやほや!熱々の状態で食べることができる。

三つ目は、「手作り化」だ。バイキングの場合、専門業者から納入された既製品を使うことが多いが、手作り料理シェアを高めることで、全体の質をアップさせている。

四つ目は、「小盛り化」である。大皿に盛って「さあお好きなだけどうぞ」というスタイルから、小さくてオシャレな器に彩り良く盛り付け、「一皿ずつ持って行って下さい」というシステムに移行しつつある(写真参照)。

バイキングにおいても、「料理は見た目が9割!」なのだ。

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ある温泉ホテルの「小盛り化」の実例。自分の好きな料理をピックアップするだけでよい。

この4つの潮流は、これからも確実に進化し続けることだろう。「地産地消化」は、地場産の食材を使えばいいというわけではない。これを突き詰めていけば、「鮮度」や「季節感」「旬」にこだわるようになる。そして、産地や生産者、食材の特徴など価値のある情報を文字化・活字化して食べ手に伝えたいと思うようになる。すなわち「情報化」につながっていくのだ。

「料理の実演化」についても、ただ単に料理を作っているシーンを見せるだけではツマラナイ。今後は、「ライブ化」「エンタメ化」が進み、バイキング会場ではたくさんの「驚き」や「会話」「笑顔」が生まれるだろう。

最終的に決め手になるのは、「人的サービス=OMOTENASHI化」である。「手作り化」に関しては、「自家製化」「オリジナル化」「新メニュー化」等の競争が激化し、多種多様な料理が出現する。「小盛り化」は、「更なる料理の個性化」「品質(味)の向上」「凝った演出」をもたらす。

 

それでは、このようなバイキングマーケットの変化に対応するため、ホテル側はどうすればよいのだろうか。

キーワードは3つあると思う。「外部試食の導入」「仕入れ力の強化」「客単価のアップ」だ。料理セクションや支配人、経営者による内部試食をするところはあるだろうが、外部識者を呼んで顧客の観点で商品チェックをしている施設は多くはない。外部の眼を入れることで、品質は確実に高まっていく。

また、魅力的な食材の発掘や一円でも安く仕入れることは、料理全体の満足度を上げていくための必須条件である。優秀な料理人と同様に、有能な仕入れ担当者を確保することは、経営上の重要な打ち手だと肝に銘じるべきだろう。

最後に…。一泊二食込み込み料金システムの温泉ホテルの場合、使える食材原価は限られている。料理の顧客満足度を上げるためには、食材原価も上げていく必要がある。真っ当なお金をいただいたうえで真っ当な料理を出すという循環サイクルを構築するためにも、客単価の引き上げは欠かせない。もはや、価格競争ではなく価値競争の時代なのだ。

 

大型の温泉ホテルの場合、価値&魅力創造のキーはバイキング改革である。これからも、進化するホテルのバイキングを楽しみに見ていきたい。

ヒロ中田

自称「空飛ぶご当地グルメプロデューサー」。食による地域活性化をテーマに活動中で、「新・ご当地グルメ」「新・ご当地みやげ」「来場者参加型グルメグランプリ」等を提唱。特に、地場産食材に徹底的にこだわった企画開発型の新・ご当地グルメを多数プロデュース。2015年は「加賀カニごはん」「中泊メバルの刺身と煮付け膳」など6つの新・ご当地グルメを手がけた。1984年4月(株)リクルート入社。『北海道じゃらん』編集長を9年半務めた後、2009年4月より現職。