研究員コラム未来を創ろう。

2014/07/14

研究員: 三田 愛

7人の変革チームが、400人を巻き込む!「自発的地域活動」を起こした3つのポイント

「どうしたら、もっと主体的に人は動くんだろうか?」 「どうしたら新しい企画が生まれてくるんだろう」 「市民と行政は対立構造。行政は縦割りで物事がなかなか進まない・・・」 そんな地域の悩みをよく伺います。

今回は、1年間、地域変革・行政変革プロジェクトを共に行ってきた、 和歌山県有田市の研究から見える、 地域変革・行政変革の3つのポイントをご紹介したいと思います。

【地域変革・行政変革の3つのポイント】

★1)「関係の質」   

      -人の行動を変えようとするのではなく“関係の質”を高めることから始める

★2)「北極星」

      -内からエネルギーが湧き出る“ありたい未来”を描く

★3)「試しの実践」(プロトタイプ)

      -まず試しにやってみる。大きな計画を描くのではなく“小さな次の一歩”を繰り返す

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★1)「関係の質」  

      -人の行動を変えようとするのではなく“関係の質”を高めることから始める

 

行政や地域に意識変革を!と意気揚々と始まったプロジェクト。 しかしプロジェクトチームは壁にぶつかりました。 それは「人は変えられない」ということ。 そして「地域の課題は複雑で根深く、簡単に解けるものではない」ということ。

チームがまず取り組んだことは「ラーニング・ジャーニー」。 地域内外のあちこちに出向き、普段何を考えていて、何に困っているのか、 その方の困りごとが自分ゴトに感じるほどに、 「共感的インタビュー」を何人にもしていきました。

その中で変革チームは 「これまで頭では分かっていたけども、真に理解できていなかった事実」に気が付くことになります。

例えば「漁師さんの後継者問題」。頭ではわかっていたけれども、 家庭の夕食時で話される会話を知り、 「本当にこれは変えないとやばい状況だ」と心で本気で実感した、ということもありました。

そうして、真の課題を実感するために行ったラーニング・ジャーニーでしたが、 大切な副産物がありました。

それは「市民と行政の”関係の質”が変わったこと」。

誰でも、自分の話を共感的に聴いてくれることはすごく嬉しいことです。 市民の皆さんからすると「行政の人にヒアリングされたことはあったけど、 こんなに親身に話を聞いてくれるなんて」と、一気に距離が縮まりました。

実は、これが次に行った、市民90人で未来を考える会(わいがや会)の 大きな布石になったのです。

Horz_2▲ラーニング・ジャーニーで地域の方々に聞いた内容を共有。自分ごとのように地域の悩みを感じていく。

 

★2)「北極星」  

      -内からエネルギーが湧き出る“ありたい未来”を描く

 

不確実で誰も正解が見えない今の時代、過去の延長ではうまくいきません。 だからこそ、自分が、皆が、どんな未来にしたいのか、 内から湧き出る「ありたい未来(北極星)」をありありと描くことがとても大事になります。 北極星があって初めて、航海図が描ける。 そして、へこたれない原動力となり、仲間ができていきます。

そんな北極星を地域の多様な人たちで描く、 市民90人で未来を創り、語り合う場 「わいわいがやがや あがらのまちを皆で考えてみよら会(わいがや会)」を開催しました。

10代の子供から70代のおじいちゃんまで、 漁師、農家、保育士、福祉、消防士、民間企業、主婦、行政、議員等、多様な方々が集まり、 「有田の誇り(好きなところ)」「実現したい、ありたい未来」を語り合いました。 そして、会の終わりには「自分ゴトで取り組んでいきたいプロジェクトアイデア」として 13のアイデアが生まれました。

この場を創り上げる過程も本当に感動的でした。

1人の職員(福祉課長)のアイデアが、 50人の保育士、200人の園児を巻き込んだのです。

市民の方が「未来を考えたくなる場」を創ろう!と、 園児が描いた“未来を感じる絵”を貼った手作りの招待状を渡したり、 保育士さんの手による、有田らしさを感じられてワクワクするような装飾を部屋一面に飾ったり。 (日本海外数多くのセッションをみてきましたが、 正直こんなにレベルが高い装飾に出会ったことはありません)

保育士の方々にとっても、いつもは園内だけで使っている装飾のスキルを「市の未来ために使える」、 新しい役割意識を感じる関わりだったのではないかと思います。

1人の想いが多くの人に伝播して、役割を活かし合うことで、当日は誰もが「楽しかった」、「有田を更に好きになった」、「やりたいことが見えた」、と 口を揃える、未来への種がたくさん生まれた場になりました。

Horz_3▲園児200人による手作り招待状や、保育士50人による装飾で場は創られた。

Horz_4▲まちへの想い・誇りを再認識し、やりたいことに溢れた。

 

 

★3)「試しの実践」(プロトタイプ)  

      -まず試しにやってみる。大きな計画を描くのではなく“小さな次の一歩”を繰り返す

 

正解は誰もわからないもの。 だからこそ、いいんじゃないかなと思ったことを、 まず「試しにやってみよう!」というスタンスがとても大事です。

わいがや会の2か月後、会に参加して、何かしたいな!と火が付いた 一人の若者漁師のアイデアが実現されました。それは、園児向けの「文紀にいやんのお魚勉強会」。 (試し、というにはかなり盛大な場でしたが)

私自身、実現までのプロセスを伺い、驚き&感激したのですが、 太刀魚漁獲高日本一などということもあり、魚はまちの誇りなのに、 魚ぎらいな子供が多いことを何とかしたいと思った―その想いに共感した、 わいがや会で出会った仲間や保育士さんたちが合計50名ほど運営メンバーとしてイベントに参加。

漁師の皆さんが漁に出て魚を獲り、 子育てサポーターの方が司会をし、 保育士さんたちが園児をまとめ、 地元企業は物品提供をし、議員や行政など多くの方が魚を焼いたり食事を作ったり・・・ それぞれが自発的に、楽しく、役割を担って、盛大な会が創られていきました。

「保育士と漁師はこれまで交わることがなかった」という、地元の方からの声にあるように、 分断していたまちの人たちが、共感する北極星(ありたい未来)によって一つになり、 それぞれの役割を活かしあえたことが何よりも素晴らしいと思います。

このお魚勉強会は有田にとって1つの事例でしかありません。

他にも、行政内で課を越えたコミュニケーションを創るための「ラジオ体操」 女性目線でまちを発掘する「女性フォーラム」、 観光事業を活性化し、次世代へ継承する「語り部」 、まちの繋がりを創る「チーム絆」 等、いろんな自発的なプロジェクトが生まれてきています。

それも、この仲間とならバカにされない、 やりたい!といえば誰かがサポートしてくれる、 そんな信頼関係が生まれたからだと思います。

そして「試しにやってみる」からこそ、目に見える成果ができ、 他の人も何かやってみたくなる。そんな好循環が創れるのだと思います。

Horz_5

Horz_6▲「お魚勉強会」では漁港に400人が集結。魚すくい、新鮮な焼き魚などのふるまい等、
ゆるキャラも応援にかけつけ、笑いが絶えない場となった。

 

 

多くの地域にどっぷりと伴走し、 地域から変革を起こす「地域イノベーション研究」を4年続けていて確信することは、 やはり、地域には、たくさんの力・可能性が眠っているということ。

そして、それが目覚め、化学反応・創発を起こしていくと、 誰も予想しない、素晴らしい成果が自分たちの力で創られていくこと。

これからも、なんとかしたい!と願う地域の皆さんと共に、 全力で、ワクワク創発する地域を増やしていきたいと思います。

三田 愛

2001年4月リクルート入社後、人材総合サービス部、人事部、海外提携・事業開発プロジェクトリーダーを経て、2011年4月より現職。人材育成・組織変革を専門とし、対話やコミュニケーションの力によって地域に眠る力を引き出す「地域コ・クリエーション(共創)研究(コクリ!プロジェクト)」に取組む。自身が地域創発ファシリテーターを務め、垣根を超えた連携「みんなゴト」化と、事業創造による「地域イノベーション」を促進し、自走型の地域活性を実現。2014年度経済産業省「地域ストーリー作り研究会」委員。米国CTI認定プロフェッショナル・コーチ。
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