研究員コラム未来を創ろう。

2014/06/16

研究員: 加藤 史子

観光振興~ゴールがスタートライン~

観光振興施策というのは、「いかに頭1つ抜けるか」に
どれだけ地域の知恵を絞れるか、ということなのではないかと思う。

例えば、すっかり地域の営業担当としての役割も、定着した感のある「ゆるキャラ」。

ゆるキャラグランプリ実行委員会によれば、
2013年度の、ゆるキャラエントリー数は1580体。
そのうち、ご当地キャラ枠へのエントリーは、1245体にのぼる。

ちなみに、日本の市区町村数は1,741(2014年4月5日時点)なので、
すべての自治体数に迫る勢いだ。

くまモンがグランプリの座についた2011年のエントリー数は
総数で349体だったので、2年で約5倍にエントリー数は急拡大した。

くまモンの成功を受け、ご当地キャラづくりが全国で一気に進んだのだろう。

それに伴い、相対的に1体あたりの一般認知度は低くなる。
2013年のグランプリキャラを皆さまは、すぐに言えるだろうか? 2012年は?
(※回答は本コラム一番下に記載)

…となると、ゆるキャラをつくるだけでは、
既に観光振興策、PR策として差別化が弱い。

そこで、いかに頭1つ抜けるかに、知恵を絞るかが大切になる。

私も1つ、気ままに考えてみた。

どうやら、世間には「着ぐるみセラピー」という考え方があるらしい。

着ぐるみを着ていれば、知らない人や子供たちも、笑顔で近寄ってきて、
握手をしたり、抱きついたり、写真を撮ってとせがまれたりする。
中身の自分という身体を越えたところで、様々な人と交流ができ、無条件に愛される。
それが、着ぐるみの中の人に自信や癒しを与えるという「セラピー効果」だ。

各自治体ご自慢のゆるキャラの中に入って「癒されたい人」を
募集するのはどうだろうか。

ストレス社会と称される現代で「癒されたい人」は大量にいる。

そして、ゆるキャラとなって全国を旅してもらう。
旅費実費は自治体PR予算で負担することを条件に、多くの応募が集まれば、
それぞれは1泊2日ずつだとしても、リレー形式で交代しながら
全国横断も不可能ではない。

訪れた地域で、その地域のゆるキャラと交流してもいい。
メディアの受けも良さそうだ。

着ぐるみの中に入って癒されたい人と、
ゆるキャラを全国区の知名度に押し上げたい地域の目的が一致する。

 

…ゆるキャラが流行れば、「それっ、うちもゆるキャラだ!」と
つくること自体は否定しない、むしろ良いことだ。

しかし、出来上がったこと自体がゴールではない。

それを活用して、いかに地域の差別化につなげるか、
「頭1つ抜けるか」のスタートラインについたということになる。

観光振興・地域づくりは、いったんゴールだと思ったところが
スタートラインである。

The First Two Letters of "GOAL" is "GO".

 

※2013年グランプリは、さのまる(栃木県)。2012年グランプリは、いまばりゆるきゃら バリィさん(愛媛県)。

加藤 史子

1998年(株)リクルート入社。「じゃらん.net」の立ち上げ企画開発、「ホットペッパーグルメ」の立ち上げ企画開発など、ネットでの新規事業開発に携わり、2008年より現職。「ビッグデータ分析による旅行者分析」や「若者旅行需要創出研究(雪マジ!19、マジ部)など、「国内旅行市場動向の調査・トレンドの把握、市場活性化および観光による地域振興に寄与する実証事業を実施・研究。
就任委員(平成27年6月1日現在)観光庁「ICTを活用した訪日外国人観光動態調査のワーキンググループ」/茨城県「商工労働観光審議会委員」/滋賀県「観光ブランド「ビワイチ」認定審査委員会」/長野県「観光振興審議会」/山梨県「交通政策会議」/福井県「観光新戦略策定委員会」/神奈川県横須賀市「観光振興推進委員会」/長崎大学「高度安全実験施設設置に関する検証委員会」など。