研究員コラム未来を創ろう。

2013/12/02

研究員: 松本 寛子

子供視点の情報発信を観光活用へ ~子供視点を狭域観光に活かそう!~

「週末はどこにお出かけするの?」

「イオンで買い物する!」

「原宿で買い物する!」

 

これは、先日行った埼玉県朝霞市の小学生のグループインタビューの一コマ。

一例にはすぎないが、地域(地元)のおでかけ・消費が、近郊の大型ショッピングモールや、沿線上の都心部に流れていることを感じる子供達のリアルな会話だった。

 今回、埼玉県和光市、朝霞市で開催している『ふるさとこども★じゃらんを創ろう!』プロジェクトでは、地域に住むこども視点の情報発信が、観光活用につながるかといったことを検証している。大型ショッピングモールなどに流れている家族のおでかけや消費を、子供達が地元の「面白い」「おすすめしたい」スポット・モノを見つけて、情報発信することで、地元に引き戻すことができないかというものだ。

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 プロジェクト実施方法としては、

1.自分の地域のおすすめスポットを取材し、他地域の子供に向けて地元の魅力を伝える。

2.観光活用が可能なように、子供達の情報を編集・冊子化。

3.和光市の子供達が作成した冊子を、朝霞市の子供達が読んで、

  インタビュー調査、およびモニターツアーを実施し、情報の実効性を検証。

4.このプロジェクトに関わった子どもと家族をネットワーク化し、他地域への周遊、

  旅行誘致の基盤とする。

 

1.を実施することで、地元の魅力の新しい発見から地元への愛着が深まる、他の地域への興味が広がることが実証された。

3.を実施することで、子供による地域の情報発信が、近隣地域の子供達の来訪意欲の向上、行動促進に繋がることが実証された。「和光市に行ってみたくなった」と思った朝霞市の子供達は60人中59人。実際に和光市を来訪するモニターツアーに10人が参加。

また、子供による地域の情報発信は、親の興味喚起も促し、「子供を連れて和光市に行ってみたい」と思った親は55人中53人という結果となった。

 

子供の来訪要素に繋がったものは、

未知のもの(知らなかった、行ったことがない、など)に対する興味

比較優位性(対自地域、地元にはない、地元より大きい・多いなど)に対する興味

個人の興味の探求(もともと好きなもの、スポーツ、本、食べ物など)

 例:「ジェーソンの裏の駄菓子屋」…お菓子が好きだから、色々なお菓子を食べたい

   「新倉ふるさと民家園」…昔の人の暮らしに興味がある、今の暮らしに役立ちそう

共感 (同じ経験をしたい、同じ気持ちを味わってみたい)

 例:「百段階段」…達成感を味わいたい、頂上から東京の街を見てみたい

写真・情報からの刺激

 例:「月の工房」…カフェテラスがある店内に惹かれたから

 

又、「こどもの情報発信」に対して、子供も親も興味があり、信頼性もあるようだ。

グループインタビューでは、「子ども=同じ年代の層」が発信する情報に対して、

「大人が面白いと感じるものと、僕たちの面白いと感じるものは違う。だから、同じ年くらいの子がオススメしてくれるとこは、信じられる」

「原宿にいったら、お母さんとは別行動。だって、見たいものが違う。だから同じ年代の子がいいというものは、興味がある」とのコメント。和光市の子どもたちの情報の「スリル満点の熊野神社の洞窟探検」、「夏になるとクワガタが獲れる樹林公園」などに、子供心はくすぐられる。

同時に、子供達が薦めるところに、自分の子供を連れて行きたいと思う親御さんも多い。

「着眼点がおもしろい」「今まで気づかなかった遊び方がわかる」「見落としがちなスポットを知れる」という子供視点に対する新しい発見、「子どもが選んだ場所は、家族でのおでかけの参考になる」「わが子も楽しめそう」という自分の家族・子どもにあてはめる視点、「地元の人の情報どは穴場がありそうだから」という地元情報への信頼性などが、こどもの発信情報への親の興味として挙げられる。親は、「自分の趣味・興味」x「子どもと楽しむ」要素が来訪要素につながるようだ。

 

一方、近隣のおでかけに消費行動は伴っているのか?

今回、朝霞市の子供達が興味をもったものは、和光市の駄菓子屋、ラーメン屋と雑貨屋。子供のお小遣いでも買うことのできそうな「食」、「もの」。その惹かれる理由は「美味しそう」だけでなく「素材のこだわり」、「店の人の思い」、「店の雰囲気」などにある。先日行なったモニターツア-では、地元のおしゃれな雑貨屋に立ち寄った際、お母さんのお土産にと手作りのブローチを購入していた子供が実際にいた。

又、こどもが食べてみたいと感じるものに、親も「子どもが喜ぶなら」「子どもと一緒に楽しみたい」という声があがる。

 このような子供とその親の消費行動を促す受け皿が街にもっと用意できないか?隣町のそそる「食」は何か?買いたくなるお土産は何か?こどもフレンドリーな店舗か、こども特典のあるサービスか、それともその地域でしか買えない何か?か。週末、公園の横にやってくる移動式フード店や、こどもの興味をそそるものでいっぱいの「食」イベント、児童館・図書館などで行う産品販売など、策は色々ある。こどもの知恵を借りながら、地域ぐるみで近隣の子供・家族の行動を喚起するようなおでかけ・消費を創出していければと思う。

Photo

お母さんにお土産を買う双子ちゃん

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和光第四小学校のSL

 

松本 寛子

1998年JTB入社、国際旅行事業部にて訪日旅行者への旅行企画・海外営業を担当。2005年リクルート入社。教育機関広報部を経て、2009年4月、旅行事業(現(株)リクルートライフスタイル)へ。インバウンドサービスの検討、海外法人・海外じゃらんの立ち上げを担当。2013年より現職。地域に必要な観光推進組織(DMO)の在り方を研究中。