研究員コラム未来を創ろう。

2013/09/17

研究員: 加藤 史子

「シェア旅」~旅行のCtoC(個人間取引)の可能性~ 

モノが溢れる成熟社会において、
かつてと比べれば、
モノの所有に価値を見出す人は減っているのかもしれない。
 
 
「カーシェアリング」や「シェアハウス」を選択する人は、
経済的に車や家を所有できないから、というわけでもない。

合理的かつ便利な移動手段として
「カーシェアリング」を愛用していたり、
住民同士の交流・ゆるい大家族のような暮らし方に心地よさを覚えて
「シェアハウス」を希望する人もいる。

この”シェアする”という価値が、
旅行にも大きくなっていくのではないか、ぼんやりとそんな予感を感じている。
 
 
 
旅行市場は、今、ほとんど、BtoC市場である。
BtoCとは、企業(business)と一般消費者(consumer)の取引のこと。

旅行は、交通事業者(business)が旅行者に移動手段を提供し、
宿泊事業者(business)が旅行者に、泊まる場所や食事を提供している。

対して、一般消費者同士の取り引きをC to Cという。

たとえば、
その地域に住む人が空いている建物や部屋を旅行者に提供したり、
その地域に住む人の日常の「夕食」に旅行者がお邪魔したり、
東京ー大阪など長距離移動する個人ドライバーが
旅行者に「助手席」を提供したりといったことが、
今後、ひろがっていくのではないかという気持ちだ。
 
 
 
「移動手段」や「泊まるところ」や「食事」をシェアさせてもらう、」
いわば「シェア旅」は、
経済的にお得なだけなく、
一期一会の出会いとドラマに満ちた旅の価値を生む。
 
 
 
 
「AirBnB」というサービスは、2008年アメリカからスタート。
今や、世界の192ヶ国、34,000都市の人々が
空いている部屋や家を登録し、
旅行者は、そこから泊まる場所を選ぶことができる。

次の休みに海外旅行でロンドンにでかけるとして、
ホテルに滞在するのもいいが、
とあるロンドンっ子の家に泊まり、交流ができたら、
それはきっと思い出深い旅になるというのは、想像に難くない。

 
▼AirBnB
 https://www.airbnb.jp/
 
 
 
 
 
「キッチハイク」というサービスは、
キッチンとヒッチハイクを組み合わせた造語だ。
その名の通り、台所のヒッチハイク。
自分の料理で人をもてなしたい人が、登録をしている。
旅にでかけ、有名なレストランで食事をするのもいいが、
その土地に住む人の家で、
普段、その土地で食べられているような料理を食べられたら、
忘れられない旅になりそうだ。
サイトには、「DISCOVER THE WORLD THROUGH KITCHENS!」とある。
キッチンを通じて世界を発見!…わくわくする響きである。

 
▼キッチハイク
 https://kitchhike.com/
 
 
 
 
 
「のってこ」はライドシェアサービス。
長距離移動をする個人ドライバーが、
同乗者を募集することができる。
移動時間中、語り合って、すっかり意気投合するかもしれない。
 

 
 
▼のってこ
 http://notteco.jp/

サイトには、「相乗り仲間を見つけよう。ライドシェアなら、移動が楽しくなる。」とあり、
滋賀県←→東京都 (★3名募集 滋賀県大津市から東京都往復)など、
同乗者の募集が多く載せられている。
 
 
 
 
 
どれも“一期一会”、
“地域の人(ロコ)や旅行者同士での濃密なコミュニケーション”などが、
確実に味わえる。

もちろん、法的には? 安全性は? など考えればキリがないが…
思えば、日本の、昔の旅はそうであった。
「今晩、泊めてください。」と旅人が民家を訪れて、
宿を得て、そこで濃密なコミュニケ―ションが展開される。
そして翌朝、
「一宿一飯の礼」として旅人は何か異文化の産物を置き土産に
(珍しい品物だったり、見たことのない芸だったり)
また次の場所へと、旅人は去っていくのだ。

現代のITやソーシャルメディアの隆盛は、
むかしむかしの旅の形を、
再び現代人にもたらすのかもしれない。

加藤 史子

1998年(株)リクルート入社。「じゃらん.net」の立ち上げ企画開発、「ホットペッパーグルメ」の立ち上げ企画開発など、ネットでの新規事業開発に携わり、2008年より現職。「ビッグデータ分析による旅行者分析」や「若者旅行需要創出研究(雪マジ!19、マジ部)など、「国内旅行市場動向の調査・トレンドの把握、市場活性化および観光による地域振興に寄与する実証事業を実施・研究。
就任委員(平成27年6月1日現在)観光庁「ICTを活用した訪日外国人観光動態調査のワーキンググループ」/茨城県「商工労働観光審議会委員」/滋賀県「観光ブランド「ビワイチ」認定審査委員会」/長野県「観光振興審議会」/山梨県「交通政策会議」/福井県「観光新戦略策定委員会」/神奈川県横須賀市「観光振興推進委員会」/長崎大学「高度安全実験施設設置に関する検証委員会」など。