研究員コラム未来を創ろう。

2013/04/15

研究員: 加藤 史子

住む人の「地域への愛着」がチカラになる!

数年前、じゃらんリサーチセンターが行った「ご当地愛調査」では、
ご当地愛が高い地域ほど、旅行先としても人気が高いという相関関係が見て取れた。

“旅行先として人気が高いから地域住民の誇りも醸成される”のか、“地域に誇りや愛着を感じている人が多い土地だから旅行者も訪れてみたいと思う”のか、どちらが先なのかはわからないが、
「住んでいる人が愛着を感じていない地域に、訪れたいと思う旅行者はいない」ということは言えると思う。

国も「住んでよし、訪れてよしの地域づくり」をスローガンとして掲げている。

総論として、なんとなく、理解はできる。

しかし、「ご当地愛ってなんだ?どうやったら育まれるの?」というのが私の疑問だった。

そこで、自分のことを考えてみた。

都心のオフィスから自宅最寄りの駅に帰り着くと、空気の匂いが違う。その季節季節の、緑と土と潮の香りが入り混じった、少し湿った空気。深呼吸するとリラックスできて「ここに住んでいて良かった」と思える。

晴れた日の午後のベランダで感じる、ぬくもりや穏やかな時間。外に出れば挨拶しあう近所の人々。

こんな、ささやかな幸せ、この地域に住んでいることへの満足が積み重なって、ご当地愛は育まれていくのではないか。

このような考えが日に日に大きくなっていき、ご当地愛を可視化するソーシャルメディアプロジェクトとして「かまくらさん」「ふじ氏」の取組を、鎌倉市・富士市のご協力を得て、スタートした。

これは、鎌倉や富士市・富士山に愛着を持つ市民の皆様が情報発信者となり、自分が感じた地域の魅力を表現するというものである。いわば、ソーシャルメディア上の「お国自慢」。それぞれ現在、200名以上の情報発信者により、日々、その地域のいいところ、知られざる素顔、魅力などが発信されている。

▼かまくらさん
http://www.facebook.com/kamakurasan1192

▼ふじ氏
http://www.facebook.com/Fuzhishi

今朝(4月15日)、ページをのぞいてみると「かまくらさん」の投稿は、ツバメの写真つきで、「今年はツバメの登場も心なしか早い気がします 岐れ道のベルグフェルドとファミリーマート横のクリーニング屋さんに巣を確認(^_^)」というものや、「”きれい きたない は 人間の ものさし”…鎌倉材木座実相寺の門前のお言葉から。朝の海散歩でいつも気になる。今朝はなんて書いてあるかな?
慈愛あふれる問いかけは、毎朝門前を通り、登校する中学生に向けているのでは、ないかと思えてならない。ニンゲンの物差しってナンダ?と、思うだけで大成功。たとえ、どんなに短くても、あれ?っと思ったのならそれは、もう立派な読書! ステキてす。ご住職。」という投稿。

見ていても、みなさんの地域愛あふれる投稿に、「じーん…」としてしまうことも、しばしば。

仕事や育児が忙しいなど、物理的に地域活動が、なかなか出来なくても、地域のために「何かしたい」という人もSNSを通じてならつながることができる、隙間時間で情報発信をすることができる。

この仕組みにより、地域に愛着を持ち主体的に行動したい市民、あるいはその地域のファンが「かまくらさん」「ふじ氏」として集いネットワーク化される。

「かまくらさん」の説明会には、会議室に入れないほどの多くの市民が訪れ、市役所の方々があわてて椅子を増やす場面もあった。市役所の方が印象的な言葉をおっしゃっていた。

「市役所の窓口にいらっしゃる市民の方からは、要望やクレームをいただくことが多いのですが、今日、地域のために何かしたいという方々がこんなに多く集まって、熱く地域の未来を語ってくださって、われわれには、こんなに仲間がいるんだ、と驚きました。われわれだけでやるのではなく、市民の皆様と一緒にやっていきたいと強く思いました。」

自治体に意見や不満を伝える市民や、意義を問いただしたり要求を代弁する議会の人々の存在は、はっきり見えるのに対し、感謝したり地域を愛し応援したい・力になりたいと思っていたり、個人的に活動をする市民の顔は見えにくいのかもしれない。

わざわざ役所を訪れて「いつもありがとう。この地域は、こんなところが素晴らしいですよね。私も実はこんな活動がしたいんです。」
と、言いに来る機会は、ないからだ。けれど、それは見えないだけで、必ず「地域の応援団やファン」は存在する。
要求したり意見するだけではなく「主体的に活動したい、あるいは、している」人もいる。具体的活動は出来なくても日々、この地域に愛着を感じている人も多くいる。

このような人の存在を見えるようにしたくて、本研究を開始した。そして、そういった人々も個人単体ではできることも限度があるかもしれないが、そういった個人をつなぎネットワーク化することで、大きな力になる。

普段はオンラインのつながりだが、たまにはオフラインで地域活動も行える。地域に愛着を持つ人をつなげ、地域のために何かしたいという気持ちを集めて具体的な地域活性化のための施策を実現していきたいと思っている。

人々の「この地域が好き!」という気持ちを集めて、大きな地域づくりの力にしていきたい。

加藤 史子

1998年(株)リクルート入社。「じゃらん.net」の立ち上げ企画開発、「ホットペッパーグルメ」の立ち上げ企画開発など、ネットでの新規事業開発に携わり、2008年より現職。「ビッグデータ分析による旅行者分析」や「若者旅行需要創出研究(雪マジ!19、マジ部)など、「国内旅行市場動向の調査・トレンドの把握、市場活性化および観光による地域振興に寄与する実証事業を実施・研究。
就任委員(平成27年6月1日現在)観光庁「ICTを活用した訪日外国人観光動態調査のワーキンググループ」/茨城県「商工労働観光審議会委員」/滋賀県「観光ブランド「ビワイチ」認定審査委員会」/長野県「観光振興審議会」/山梨県「交通政策会議」/福井県「観光新戦略策定委員会」/神奈川県横須賀市「観光振興推進委員会」/長崎大学「高度安全実験施設設置に関する検証委員会」など。