研究員コラム未来を創ろう。

2013/02/15

研究員: 三田 愛

自分ゴトで創る未来:自ら価値創造し続ける地域づくり

人は全ての人に生まれ持ったギフトや可能性が溢れている。
そんなギフトや可能性を最大限発揮して生きることが、本人も幸せで、
そして、可能性を発揮する人同士が、お互いが相互作用・化学反応を起こしていくことで、
どんどん新しい未来、社会が拓けていく、と心から信じており、
そんな社会創りが私のライフワークです。
(思いの源泉は小学生の頃から。
 今思い返すと、天職の教育者であった亡き母からもらったバトンの1つです)

地域もあらゆるギフト・可能性に溢れていると思っています。
地域の人たちが、ワクワク新しい価値、新しい未来を創り続けていくには、どうしたらいいだろうか。
どうしたら、本来地域が持つ魅力が最大化されていくだろうか。

そんなことを、日々日々考え、実践し、また考えています。

地域には様々な社会課題が「複雑」に絡み合っています。
この社会課題を誰か(国・行政など)が解決してくれる、という過去のパラダイムではなく、
それぞれの人が「自分ゴト」として捉え、自分たちで変えていくことで、
地域変革/地域イノベーションは生まれると思っています。

先日、英国ロンドンにソーシャルイノベーションの研究調査に行きました。
ソーシャルイノベーションに専門的に取り組む研究組織NESTA(ネスタ)に学んだフレームワークがあります。

ソーシャルイノベーションとは、「社会のシステムを変革」すること。
社会システム変革をし、人々の「行動変容を促す」には、
4つのイノベーションが必要である、と。

(1)Product+service innovation商品サービスイノベーション
(2)Market innovation市場イノベーション
(3)Cultural innovation文化・慣習イノベーション
(4)Political innovation政策・施策イノベーション

私は地域を変革するイノベーションには、特に
(3)「Cultural innovation地域の文化・慣習を変える」こと、
(4)「Political innovation政策・施策への変化をもたらす」こと
から行うことが大事だと考え、
現在行っている研究では特にこの2つにフォーカスをしています。
(「自ら価値創造し続ける地域づくり」を研究の柱として、
5つの研究プロジェクトを進めています。
詳細はまた、とーりまかしや観光振興セミナー等でご紹介させてくださいませ)

その研究プロジェクトの1つに、
黒川温泉で行っている「地域一体で地域の未来を創る“文化”創り」プロジェクトがあります。

黒川温泉は皆さんもご存じ、30年前に後藤哲也さんをはじめ、当時の青年部(今の親会)メンバーら、
旅館経営者・後継者たちによって創られた温泉地です。
今は他地域と同様、過去と比べると集客数等も落ちている中、
世代交代の時期でもあり、現在の青年部メンバーも何かしなければ、という危機感はあるものの、
これまでまちづくりを進めてきたのは主に親世代。
青年部がどう進めていくかは見えておらず、研究プロジェクトとして共に未来を創っていくことになりました。

ポイントは、
青年部メンバー(旅館経営者・後継者)だけで未来を考えるのではなく、
近隣農家、行政、喫茶店オーナーやカメラマン、親会メンバー、
旅館では女将さんやスタッフ、そして地域づくりに興味がある他地域の人等、
「多様な」ステークホルダー(関係者)で
未来の地域づくりセッションを行っていったこと。
そして、東京渋谷や福岡等、都市に黒川メンバーが来て、
都市の人たち各40人と黒川の未来づくりのセッションを行っていきました。

『これは山が動くんじゃないか!?』
と期待感を持っていただきながら進めてきましたが、
半年たった今、驚くべき変化がありました。

なんと「会社を創る」ことになりそうと。

「多様な人や知恵が集まる場」が何より大事だ!と思った黒川青年部。
都市の人たちが黒川で仕事ができるような「サテライトオフィス・コワーキングスペース」を創り、
長期滞在できるように空き家を改装。
滞在中は入湯手形で湯めぐりを楽しむ。
そんな新しい地域滞在のスタイル/受け皿創りを考えているそうです。

しかも、自由と責任を持って取り組むために、
既存組織ではなく、自らお金を出し合って、会社を創ると。
今、黒川青年部のメンバーたちは、
「おしりに火が付いた!」とワクワク楽しく企てをしているとのこと。

その覚悟と変化に感激しました。

変化の理由の1つは、
これまで壁だと思っていた人が味方になり、
同じ方向を向いた「仲間」になっていっているからだと思います。

最初は、親会には青年部の提案はいつも否定される、と思っていたが、
実際、共に同じ方向を向いて未来を創るセッションをすると、実は応援してくれていることに気づく。
今まで地域づくりの話を共にしたことがない農家の人等が、セッション後は楽しそうに帰っていく。
都市に来て一緒に地域創りのセッションをして、これまで「お客さんはもてなすもの」だったのが、
実は「共に未来を考える」ことや、地元民と交わることを求めていることに気づく・・・

そんな新たな「気づき」を得て、「仲間」が増えることで、
新しい視点とパワーが生まれ、新しい価値創造が生まれていくのだと思います。

第一回黒川温泉フューチャーセッション(いち黒川わっしょい!)の様子

http://youtu.be/i0zUGtGQkb8

地域を悪くしたいと思っている人は地域にいない。
でも“地域のため”の団体は数多くあれど、
「●●が悪い」とお互いのせいにし合ったり、
承認し合えず、上手く相互作用を起こせていないケースは多々耳にします。
地域のパワーが打ち消し合い、何も生まれない。動かない。
そんなもったいないことってあるでしょうか。

無駄な壁はどんどん取っ払い、
「仲間」として、ワクワク地域の未来を創っていく。
そんな地域や人の持つパワーが最大限発揮され、
元気な地域が増えていくことを心から願い、
これからも地域の皆さんと共に、研究・実践を続けていきたいと思います。


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英国ロンドンへのソーシャルイノベーション研究調査(Nestaにて)(2012年12月)

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黒川温泉での第1回フューチャーセッション(2012年10月)

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渋谷コワーキングスペースでのセッション(2013年1月)

三田 愛

2001年4月リクルート入社後、人材総合サービス部、人事部、海外提携・事業開発プロジェクトリーダーを経て、2011年4月より現職。人材育成・組織変革を専門とし、対話やコミュニケーションの力によって地域に眠る力を引き出す「地域コ・クリエーション(共創)研究(コクリ!プロジェクト)」に取組む。自身が地域創発ファシリテーターを務め、垣根を超えた連携「みんなゴト」化と、事業創造による「地域イノベーション」を促進し、自走型の地域活性を実現。2014年度経済産業省「地域ストーリー作り研究会」委員。米国CTI認定プロフェッショナル・コーチ。
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