• 2015/06/07
  • Edit by HARUMA YONEKAWA
  • Photo by KENICHI AIKAWA

第1回コクリ!キャンプ タネビ対談(3)共同研究対談 佐々木さんは、なぜ 年間500人の「自己変革」を促せるのかその秘密を体系化したい

第1回コクリ!キャンプから生まれた“種火”をご紹介します。

前野先生(前野隆司さん:慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科委員長・教授)
×
佐々木さん(佐々木裕子さん:株式会社チェンジウェーブ 代表)

第1回コクリ!キャンプから、3カ月以上が経ちました。タネビストの皆さんは、コクリ!キャンプでの出会いを活かし、それぞれの持ち場で少しずつ“種火”を大きくしています。そのほんの一部を“タネビ対談”としてご紹介していきます。

3回目は、第1回コクリ!キャンプで知り合った前野先生と佐々木さんの組み合わせ。コクリ!キャンプがきっかけで、ChangeWAVEの共同代表として、数々の企業で変革プロジェクト実践サポートと変革リーダー育成プログラムを手掛ける佐々木さんの実践知を、幸福学、システムデザインなどを幅広く研究している前野先生が体系化する形で、共同研究を進めることになったそうです。その経緯や詳細を、お二人にSkype+対面で伺いました。
※インタビュー日/2015年3月23日

私の自己変革手法は、今のところはアート
前野先生に、科学にして欲しい

――コクリ!キャンプの感想と、お二人の出会いの経緯を聞かせて下さい。

前野 佐々木さんとは、最初のチームで出会いました。僕は、コクリ!キャンプでは特に最初のチームが思い出深くて、佐々木さんや農家の小島さん(小島希世子さん)など、自分とは違う考え方のもとで素晴らしい活動をしている方を知ることができ、有意義な場でした。三田さんがしっかり時間をかけて組み合わせを用意されただけあって、楽しかったです。田坂先生の「ボランタリー経済とマネタリー経済の融合」や「事物の螺旋的発展の法則」の話も印象に残っていますね。僕の研究する「幸福学」とほとんど同じことを、違う言葉で話されていると感じました。

同じくコクリ!キャンプに参加した同僚の保井先生(保井俊之さん)、坂倉先生(坂倉杏介さん)と3人で話していると、各自がそこで知り合った人の話題になることがよくあります。このようにして終わった後に話し合い、1対1の関係が、多対多の関係へと複雑につながっていくのも面白い点。コクリ!キャンプの2次的、3次的効果は、他のタネビストたちの間でもいろいろと出ているのではないでしょうか。

佐々木裕子さん:株式会社チェンジウェーブ 代表

佐々木 コクリ!キャンプは、極めて短時間で効率的にビビビと来た人とつながり、同志を見つけられる場でした。飲み会では、同志になるまでに最低でも3ステップ必要ですが、コクリ!キャンプではそれを全部飛ばして、すぐに深く理解し合うことができました。私の場合、その相手が藤井さん(藤井薫さん)と前野先生だったんです。お二人とも私と同じように、人の可能性は無限大で、誰もが幸せな社会を創りたいという想いをもっていらっしゃいます。そこがビビビと来た大きな理由だと思います。前野先生とはその場で意気投合して、「一緒に何かやりましょう。とりあえずお互いの本を読んでから、もう一度会いましょう」と約束。その後に一度お会いして、互いの本やキャンプの感想を交わし、私から熱烈なラブコールを送って今に至ります。

――具体的には、どんなラブコールを送ったんですか?

佐々木 私は、さまざまな企業の変革プロジェクトの実践をサポートし、変革リーダーを育成する仕事をしています。年間500人ほどのリーダーの自己変革を促していますが、そのメソッドは今のところ「アート」です。私自身はどのような状況でも変革リーダーを生み出すことにコミットしているのですが、自分でもそのメカニズムが明確に分からないまま、経験や感覚で進めているところがあるのです。そのため現状、「変革屋」は私一人で、私に代わる存在を育成することができていません。

例えば、昨日と今日行ってきた2日間のプロジェクトでは、最終的にベテラン部長の方が、涙を流しながら「私はもう一度新入社員になる」とまでおっしゃいました。こういった劇的な変化がなぜたった2日で起きるのか、私自身もメカニズムの全貌を知りたくてたまりません。そのことを前野先生にお話ししたら、「論文にしたら面白そうですね」とおっしゃるのです。それでぜひ、私の活動のメカニズムを体系化し、論文にしていただきたいとお願いしています。

まずはプログラムを実際に見て、
徹底的にデータを収集したい

前野 彼女は、企業のリーダーたちに、直感的に自己変革を促していくのだというのだけれど、年間500名のリーダーを変えていくわけだから、そこには何か優れた方法があるはずです。データを取って分析し、秘密を明らかにして、変革リーダー育成の手法を体系化できたら面白いと思っています。いま、佐々木さんご自身はメカニズムが分からないとおっしゃっていましたが、もちろんある程度は自覚されています。例えば、映画を創るように各プロジェクトのシナリオを練るのだそうです。特に、プロジェクトの最後のシーンで、受講者一人ひとりがどのような姿になり、どういった行動を起こしているかをしっかりイメージしてから本番に臨む。すると、皆が大きな壁に当たり、一度テンションを下げた後、ある時点からぐっとモチベーションや能力が上がっていき、最終的にはイメージどおりに全員が変化していくというのです。

前野隆司さん:慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科委員長・教授

佐々木 私のプログラムの基本形は、述べ2日から7日間の短期集中型。本当は業務で数カ月くらいかけて取り組むような大きな課題を、受講者の方々に数日で挑戦していただきます。当然、全力で取り組んでも、まず100%の成果に達しないことがほとんどで、多くの受講者の方々が挫折感を味わいます。そこで、失敗の原因・理由を自ら考え、徹底的に自分をメタ認知していただくのです。このプログラムを経ると、企業の本質的な競争力が上がっていきます。この数日間の本番のために、私も数カ月かけて準備を行います。

前野 佐々木さんの変革リーダー育成と似た活動は、世のなかにはいろいろあります。最初に、それらと似た点、違う点をはっきりさせていきましょう。例えば、コーチング。話を聞く限り、佐々木さんも一部にコーチング・プロセスを取り入れていますが、一方で能動的にアプローチしていく点も特徴で、そこは明らかにコーチングとは違います。また、受講者に試練を与え、厳しい状況を創り上げる手法は、自己啓発セミナーでもよく見られます。これは僕も分からないので、佐々木さんに質問したいのですが、自己啓発セミナーとはどこが最も違うのでしょう。

佐々木 個人に閉じていない点だと思います。私のプログラムは、受講者の方々のリアルな仕事に基づいて、その延長線上で考えていただくもの。そこには必ず、上司や経営陣、クライアント、スポンサーとの関わり、事業を通じた社会との関わりがあります。

前野 なるほど。やはりもっと詳しく話を聞き、プログラムを実際に拝見しないと分からないことが多いですね。徹底的にデータを収集するところから始めましょう。保井先生や研究員、学生たちも協力してくれると思います。

僕の幸福学研究にとって、
佐々木さんはミッシングピースかもしれない

――ところで前野先生は、なぜ佐々木さんの仕事に興味をもったのでしょうか?

前野 僕は幸福学を研究しているのですが、現在の幸福学研究では、ポジティブ心理学、マインドフルネス、瞑想、つながり、感謝といったキーワードが世界的に注目されており、全体的に優しさ、心地良さを求める方向に進んでいます。私はそこに不満があるのです。優しさだけでなく、ある種の厳しさを含んだ「自己変革」や「自己実現」も、幸福学のメインストリームだと思うのです。しかし、自己変革・自己実現の研究は世界的にあまり進んでいません。そこに佐々木さんが現れた。スゴイ人と出会ったと思っています。もしかしたら、僕の幸福学研究にとって、佐々木さんがミッシングピースかもしれないと考えているほどです。

そこでもう一つ、佐々木さんに質問があります。佐々木さんは幸福学に興味があるとおっしゃっていましたが、自己変革と幸せの関係はどのように考えていますか?

佐々木 私は、「人は自分が幸せになるためにしか変わらない」と確信しています。私の経験では、誰かの期待に沿って変わることは一度もありませんでした。例えば、ある企業で経営者体感セミナーを行った際、最後に「私は経営者になりません」と決断された方がいました。周囲は彼を未来の経営者候補と考えており、セミナーでも経営者になれるだけの能力を発揮されていましたが、私は、本人が決断された以上、経営者にならなくて正解だと考えています。無理をして経営者になっても、いずれどこかにひずみが出てくるものですから。

――自己変革と幸福学には、確かに深い関係がありそうですね。

メカニズムが分かったら、次は いろいろな人を巻き込んで、応用したい

――この共同研究の「北極星」はどこにあるのでしょうか。

佐々木 ぜひ前野先生に、世界的な論文を創っていただきたいと思います。そして、論文ができたら真っ先に、「変革屋」を増やしていきたい。私一人の力では年間500名が良いところ。もっと多くの方々の自己変革を実現するためには、前野先生の論文が欠かせません。

それからもう一つ、自己変革のメカニズムを違う世界へ応用していきたいです。私は何冊かの本を出しているのですが、本を読まれた教育者の方々から、最近よくメッセージをいただくことがあり、教育分野でも何かお役に立てないだろうかと考えてきました。前野先生がメカニズムを解明してくださったら、例えば教育分野の方々と一緒に、そのメソドロジーを日本の教育変革に応用していきたい。教育だけでなく、さまざまな分野の専門家・実践家を巻き込んで、大きなムーブメントにしていけたらと思っています。

前野 今日、改めてお話を伺って分かってきましたが、佐々木さんの変革リーダー育成プログラムには、おそらく多種多様なノウハウ、テクニックが散りばめられているのだろうと思います。本当にさまざまな場で役に立つ可能性がありそうです。やはりまずは実際のプログラムや実践例を知りたいですね。

PAGE
TOP