• 2016/02/09
  • Edit by HARUMA YONEKAWA

第2回コクリ!で語り合いたい問い(3) 「技術と人・社会のギャップ」に 今後、私たちはどう対応したらよいのか?

数名のメンバーが、いまコクリ!キャンプで語り合いたいと思う「問い」をご紹介していきます。

コクリ!キャンプで語り合いたい「問い」

第2回コクリ!キャンプは、互いに深くつながったうえで、「これから日本に共創型社会を創っていくために、いま解決したい社会的課題」を皆で出し合い、その本質や解決方法などを皆で対話する場にしたいと考えています。では、コクリ!キャンプに参加するコクリ!メンバーの方々は、いまどのような課題に向き合っているのでしょうか。皆さん、興味のあるところだと思います。第3回は、総務大臣補佐官・太田直樹さんです。

※この問いは、あくまでも太田さんが現時点で抱いているもの。コクリ!キャンプで実際に対話するテーマは、当日に皆で決めていきます。ぜひ皆さんも、当日は「問い」を持ち寄ってください。

※これまでの記事はこちら

Q : 「技術と人・社会のギャップ」に
今後、私たちはどう対応したらよいのか?

AIやロボットなどの技術がこれから急速に進化していくことに、異論のある方は少ないでしょう。そのとき、技術と人・社会のあいだには、必ず「ギャップ」が発生します。技術がリニアに進化する一方で、人や社会はリニアに進化しないからです。私たちはいったい、そのギャップにどう対応したらよいのでしょうか? これが、皆さんとお話ししたい問いです。

もう少しわかりやすく説明します。たとえば、AIやロボットが進化したら、「あまり働かなくてよい未来」が早晩やって来るのは間違いないでしょう。しかし、それが、人や社会にとってよいことかどうかは、一概には言えません。AIやロボットの進化と資本主義のあいだにギャップが生まれるからです。このギャップを解決できないまま資本主義が続けば、おそらく困った社会になってしまうでしょう。多くの人の働く場所がなくなり、格差がどんどん拡大して、富裕層と貧困層のあいだに大変な軋轢や摩擦が生まれ、例えばデータセンターの破壊といったテロ行為が続発して、社会不安が発生するといったことも考えられます。

一方で、そのギャップを解決した未来社会では、クリエイティブな生き方が広まるでしょう。人々はAIやロボットに仕事を任せ、お金や格差のことをそれほど気にしなくなる一方で、「あのおばあちゃんがつくる黒豆が食べたい」「あの職人さんに寿司を握ってほしい」「あの人に髪を切ってほしい」などと考える人がたくさん出てきて、そこかしこでお金では測れない価値が交換され、それによって関係を築ける社会になるのです。こうしたことについて、皆さんはどう考えますか? 私たちは、どう対応するのがよいと思いますか?

未来を創るために、いまから行動できることがある

なぜこの質問をしたいかといえば、実は、いろいろなところでこの話をしているのですが、全体的に反応が鈍いからです。『限界費用ゼロ社会』という本が出たこともあって、アメリカやイギリスではこうした話題で盛り上がっているのですが、私が接する政財界のリーダーの多くは興味がない様子。何人か、私が面白いと思う人とは、長いメールのやり取りなどをしているのですが。そこで、コクリ!キャンプに集まる皆さんの感想を伺い、一緒に考えたいのです。コクリ!キャンプは、「未来をこうしたい!」を皆で考える場。どういった答えが返って来るか、楽しみです。

第1回コクリ!キャンプにて

私は、どちらのシナリオにたどり着くかは、私たち一人ひとりの日々の意思決定の積み重ねが決めると思っています。大げさに言えば、今日の夕食について、知り合いからもらった食材で作るか、チェーン店で済ませるか。どちらを選ぶかによって、未来社会が少しずつ変わっていくのではないでしょうか。全米で最も住みたい街と言われるポートランドも、そうした選択の結果です。誰もが創造的に生活する未来にしたいなら、私たちがいまから行動できることがあるはずです。

気仙沼魚市場を視察

また、皆さんは、創造的に生活する未来社会をつくるためには、何がレバレッジポイントになると思いますか? 私の考えでは、レバレッジポイントは、「食」や「死」などにあります。「こういうものを食べたい」「こういう最期を送りたい」という共通の思いをもったグループが、社会を変えていく可能性があると思います。ただ、こうしたグループだけでは十分でないかもしれません。これも皆さんと考えたいことの一つです。

「地方創生って、意味あるの?」

もう一つ、別の問いもあります。「地方創生って、意味あるの?」というものです。私はいま総務大臣補佐官として、地方創生とICT/IoTの政策立案・実行を補佐しているのですが、その際、さまざまな人からこの問いをよく受けるのです。典型的なのが、「竹下政権のふるさと創生事業以来、何度も同じようなことをしてきたけれど、大きな効果はなかったではないか、いまさら地方創生に意味があるのか」という意見です。こうした問いは、うやむやにしないほうがよいと思っています。ただし、私自身は、この問いに明確な答えをすでに出しています。それは、ギュッシングで見つけたものです。

オーストリア・ギュッシングを訪問

ギュッシングとは、オーストリアの東の端にある小さな村です。人口4000人あまりで、特筆すべき産業もなく、長らくオーストリアでもっとも貧しい村と言われてきたそうです。20年ほど前、ギュッシングはいちはやくバイオマス発電に注目し、以来、継続的に力を入れてきました。その結果、いまやヨーロッパの再生エネルギーセンターとして世界から注目される地域となっています。私も視察に行ってきたのですが、現在は100社以上の企業が集まっており、もちろん新規雇用が増え、税収もうなぎ上りに増えたそうです。「ギュッシングでは未来が見える」が、合言葉になっています。

奈良県吉野で林業関係者の皆さんと杉のポーズ

「大事な未来は、地域で創られる」。ギュッシングに行って、そう確信しました。それからは地方創生の意味や重要性を問われても、悩むことがなくなりました。もしかすると、長く地域に関わっている方々にとって、これは当然のことなのかもしれませんが、ずっと大企業で働いてきた私には大発見でした。

「違う発想」は、必然的に地域から出てくる

ではなぜ、大事な未来は地域で創られるのでしょうか。実はギュッシング以降も、そのことはよくわかっていなかったのですが、2015年の秋に、ある美術展で一つの答えを見つけました。神奈川県民ホールギャラリーで開かれた鴻池朋子展「根源的暴力」です。鴻池さんは、3.11以降、東北の山野を中心に、自然の驚異にさらされた私たち人間の在り方を見つめ続けてきたアーティストで、その展覧会では、「道具=暴力」と定義した作品をいくつも出品していました。これが私には衝撃的だったのです。都会に住んでいると、「道具=利便性」という答えしか出てこない。道具が暴力のツールであることをついつい忘れてしまいます。こうした「違う発想」は、都市ではなく、必然的に地域から出てくる。だから、大事な未来は地域で生まれるのです。

実は日本でも、私は何度か「大事な未来」を見ています。たとえば、陸前高田市のしょうゆメーカー、八木澤商店の河野通洋さんの取り組みに、未来を感じました。彼は、震災で壊滅的被害を受けたビジネスを単に立て直すだけでなく、ハンディキャップのある方々に職業訓練を行う事業、互いに手の内を見せあいながら他のメーカーと組んで行う海外事業など、いろいろと画期的な事業を進めていて、その志、根っこの思いに強く共感しました。また、南相馬市のあすびと福島(旧「南相馬ソーラー・アグリパーク」)は、太陽光発電所と植物工場を舞台とした体験学習を通して、地元の子供たちの成長を支援し、全国の人々との交流を行う復興拠点ですが、その代表者・半谷栄寿さんは、実はもともと東京電力の執行役員を務めていた方。そんな半谷さんの取り組みからも、未来像がよく見えました。

うまくいっている地域は、コクリ!ができている

とはいえ、日本の地域には課題が山積していることもまた事実です。全国を回ってきて、行政の聞く力が弱い、組合や団体同士のコミュニケーションが乏しい、腹を割って話せる相手が少ない、出る杭が打たれるといったことをよく耳にしてきました。一方で、昨年のコクリ!キャンプで出会った森成人さんがいる気仙沼市や、同じくコクリ!キャンプで再会したじゅんさん(齋藤潤一さん)が活動する宮崎市や日南市などは、割とうまくいっている。行政と民間が互いに腹を割って話をして、「こういう地域になりたい!」という想いが共有できているからです。まさに、コ・クリエーションできているのです。地域には、もっともっとコクリ!が必要だと思います。

宮崎県日南市崎田市長と

太田直樹(おおた・なおき)
総務大臣補佐官。東京大学文学部卒。ボストン コンサルティング グループで、ハイテク、情報通信、製造業を中心に、組織戦略策定・実行支援、企業ビジョン、事業開発、業務プロセス改革などのプロジェクトを数多く手がけた後、現職。ロンドン大学経営学修士(MBA)。

 

コクリ!の深い話(6)気づいたら「コクリ!が当たり前」の社会になっているのでは ●宮城治男さん

 

コクリ!プロジェクトやコ・クリエーションに関係する深い話をさまざまな方にインタビューしていくシリーズの第6回です。特定非営利活動法人エティック 代表理事・宮城治男さんに、コクリ!プロジェクトの現在と将来について伺いました。聞き手は直樹さん(太田直樹さん)です。

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